シニアのための情報新聞「フロンティアエイジ」
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ドキュメント 私たち「超家族」 10 変転の後に
 
ほっとできる喜び得た ゆっくりと「自立」へ転換
 
   人が終の住処を考えるとき、新たな転進を選ぶことは難しい。埼玉で80余年生き、ケアハウスにも落ち着きながら、未知の奈良・斑鳩、コミュニティーハウス法隆寺に最年長で移り住んだ須崎久枝(82)も、「安心」に至るまでに、心の揺れを重ねながら1年という時が必要だった。

 斑鳩に来たのは04年11月9日。ハウスの計画段階から関わってきた甥夫婦から「叔母さん、おいでよ。部屋は別々だし、みんな、いい人ばかりだよ」と誘われ、9年なじんださいたま市の公営ケアハウスを出た。独身を通し、身の振り方まで心配してくれた兄夫婦も相次ぎ他界し、病気になると、ケアハウスには留まれない先行きを考えての選択だった。
糠漬けをしながらおしゃべり。千葉から来た隣室の戸澤昌子(右)とはウマが合う。

 新幹線で新大阪駅を降りたとき、やはり心もとなかった。迎えに来た甥から再び「みんないい人ばかり。心配しなくていいんだから」と言われて気を取り直したものの、天王寺から大和路線へ乗り換えると、車窓からビルがまばらになり人家が途切れた。法隆寺駅の急な階段をおぼつかない足で登り、暗い夜道を歩いたとき、後悔の念がどっと吹き出した。

 ケアハウスの8畳の広さに比べハウスの部屋は40平方メートル。トイレにキッチン、浴室も広くてピカピカ。田園に面した南向きで陽光がたっぷり入ったが、街の暮らししか知らない久枝には「田舎の風景」に映り、弱くなった足には買物もためらわれた。甥夫婦は最初の1カ月、自室に招いて3食の食事、入浴の世話を焼いてくれた。すべて他人の手で過ごすケアハウスの生活から、自立の暮らしへゆっくり転換するための心配りだったが、夜はまんじりともできず「明日こそ浦和へ帰ろう」と思う日が続いた。

 共働きの夫婦に代わって日中は住人たちがなにかと声をかけ、夕食会に誘ってくれた。メニューは次々変わるし、笑いが絶えない。もともと話好きの久枝は、軽妙なジョークを飛ばして楽しそうだったが、ある日、「体調不良」を理由に夕食会を断った。髪の手入れを欠かさないのに、1カ月以上も美容院に行っていないのが真因では、と察した女性たちが親切な店を探して案内。帰ってきた久枝は満面の笑顔に変わっていた。

 得意を活かして出来ることをする、がハウス住民の共通テーマ。久枝には母直伝の糠漬けがある。今では夕食会の定番メニューだし、頼まれると漬け込んで翌日に届ける。歌を口ずさみながら廊下で掃除機を押し、階段のほこりを粘着テープで取ったりする姿もよく見られるようになった。

 1年経った11月12日、久枝は姪の娘の結婚式に一人で東京へ。戻ってきての第一声は「帰るとほっとしますね。やっぱり我が家が一番」だった。12月は入居者例会を司会し、元日の朝にはせがまれてハーモニカを吹いた。「とーしのはーじめに」──仲間の合唱がうれしかった。 (敬称略)
 
 
高齢期どう住まう デンマークと比べ考える
 
   できることなら住み慣れた地域で自立し、人として尊重されながら生命をまっとうしたい−参加者で考えあう「高齢期の住まい・暮らし方」が2月18日14時から大阪・天満橋のドーンセンターで開かれる。介護保険のあり方についての提案活動にも取り組む「高齢社会をよくする女性の会・大阪」の主催。

 講師はデンマークの高齢者福祉に詳しく、レポート「『老人ホーム』を超えて」(クリエイツかもがわ刊)に続き「デンマークの高齢者福祉と地域居住」(新評論刊)を発表した松岡洋子さん(同会会員=西宮市)。

 日本でも「最期まで住み切る住宅力・ケア力・地域力がカギ」と説く松岡さんの話を中心に、改正介護保険法についてのグループ討論もある。定員70人、資料代300円。問い合わせはTEL072・757・5543(17〜21時)、申し込みはFAX(072・753・9224)で。
 
 
   
 
     
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