ニューシニアの必読紙「フロンティアエイジ」
フロンティアエイジ
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2007年10月第6−7面
もの思う秋に宿坊で泊まる
 
圓満院門跡(大津市) 東林院(京都市)
千手院(平群町) 恵光院(高野町) 圓教寺(姫路市)
圓満院門跡(大津市)  
名庭に心を洗われ 絶品の精進料理
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   皇室とゆかり深い門跡寺院はいま、全国に17カ所しかない。その一つ、大津市の三井寺境内にある圓満院門跡の宿坊に泊まった。

 平安時代987年の創設で、昭和天皇まで歴代天皇の位牌を奉安する由緒ある天台宗のお寺だが、宿坊は鉄筋3階建て、部屋にはバス・トイレ、冷暖房完備、テレビや冷蔵庫もあってホテルなみ。大ホールなどもあり、音楽団体や学校の吹奏楽部などの合宿に利用されることが多いという。
圓満院門跡

 日曜日の夜だったので宿泊者は私たちだけ。12畳の部屋でのんびりくつろぎ、夕食は20畳もある部屋で精進料理をいただく。こんにゃくやごま豆腐、生麩、野菜の天ぷらなど10品にデザートがつく。境内で湧く“三井の名水”を使うからか上品な味わいで、量もたっぷり。湧水は誰でも汲んで持ち帰れる。

 翌朝は7時からの勤行が約30分。奥野秀道第57世門跡が導師となり佛説阿弥陀経と般若心経を唱和。正座ではなく椅子席なので足も痛まない。朝食後は座禅体験。国指定重要文化財の宸殿で、指導僧に脚や手の組み方などを教わり約40分間、蝉の声だけが染み渡る静寂のなかで心を洗う。

 座禅のあとは国指定の名勝・史跡で“三井の名庭”として知られる庭園や、1647年に京都御所から移築されたという玉座のある宸殿、併設の大津絵美術館などを解説付きで案内してもらう。庭園は春の山桜、秋の紅葉の頃がとりわけ美しいそうだ。

 座禅以外に写経、平安貴族の遊びだった投扇興、僧・尼僧体験コースなどもあるが、朝の勤行以外は有料(座禅、投扇興は800円)で、いずれも予約が必要。帰りにお隣の三井寺園城寺に参詣するのもいい。

 1泊2食で9135円(1部屋2人以上。1人だと500円ほど高くなる)。JR大津駅から市内バスに乗り三井寺圓満院前で下車すぐ。京阪別所駅からは徒歩5分。予約は同院のホームページからもできる。TEL077・522・3690。 (木)
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東林院(京都市)  
 
気遣う心を養う 住職指導で料理塾
   広大な寺内に46の塔頭が点在する臨済宗妙心寺大本山に、住職手製の精進料理をいただける宿坊があると聞いて出かけた。その「東林院」は東端にあり、沙羅双樹の寺として知られる。西川玄房住職は境内奥の畑で野菜を育て、精進料理として朝夕の膳に供す。
東林院

 夕食は東京から来た若い夫婦と一緒だった。膳も器も朱塗り。ナスの田楽、サツマイモやシイタケ、がんもどきの煮物、キュウリの酢の物、水菜のごま和えなど、素材の味が調理でさらに引きたち、合掌していただいた。

 夕食を終えるとすぐお風呂。浴室には館内放送で連絡を受けたら速やかに入ること、洗髪不可などの注意書き。部屋の仕切りは襖、廊下側は障子。廊下は静かに歩き、無駄な電気は消す。門限9時、消灯10時などにお互いを気遣う心が芽生える。

 朝の勤行は僧だけ。その厳粛な声を聴きながら石畳を散策した。

 10時からは住職指導による精進料理体験教室。参加者16人の半数は常連で、10年間ほぼ毎月通っている人も。4グループに分かれて作った月見団子、うどんサラダ、エノキの枝豆あえの3品に、煮物、炒め物などが加えられ、枯山水の庭に面した奥書院での昼食の膳は盛りだくさん。

 食事の心がけや作法について解かれた五観文を唱和し、精進料理の心に触れた気がした。宿泊だけでは得られない貴重な体験だった。

 樹齢300年の沙羅双樹は昨年枯れ、今は枝を落として数珠が巻かれ、その種から育った若木が後を継ぐ。

 JR花園駅すぐ。庭の一般公開はしていないが、季節に応じて催す行事時に特別拝観できる。宿坊は1泊2食6300円。料理体験教室3150円。TEL075・463・1334。 (養)
 
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千手院(平群町)  
 
多様に修行体験 癒し求め集う若者
   聖徳太子ゆかりの「信ずべき、貴ぶべき山」信貴山。その中腹に広がる朝護孫子寺の筆頭寺院が大本山千手院(奈良県平群町)。16室ある宿坊を訪れるのは20〜30歳代が意外に多いという。
千手院

 「人にはいえないストレスを持っている。仕事や悩みから離れ、非日常の世界に身を置きたいという表れでは」と法務主任の松下隆祐さん(37)。山内の散策を希望する宿泊客を案内しながら交わす話のはしばしから伝わってくるといい、アンケートの書き込みにも「別世界」「癒される」といった字が目立つ。

 部屋は6〜12畳。江戸時代建造の木造旧館2階の虎の間(6畳)に案内されると、信貴山のシンボル・虎の衝立、経机が置かれ、長押には扁額。明かり障子を開けると欄干のついた廊下が延びる。中庭は小堀遠州の作庭とされ、緑が秋雨にぬれ深沈としたたたずまい。6・7月には沙羅双樹、10・11月には紅葉が映えるという。

 宿泊料は1泊2食で8400円(1人だと1000円増)。食事は精進料理だが、1000円追加で魚・肉の料理も出る。売り物の「鉄鉢料理」4200円は、入れ子になった大小7つのお椀に料理を盛り、食べ終わって片付けるとひとつの椀におさまる。夕食を「鉄鉢料理」に振り替えれば1000円プラスですむ。

 写経、写仏、座禅体験(いずれも1000円)のほか、本格的な1日修行体験も可能。朝はおかゆ、漬け物、昼はめん類、夜はご飯、煮物、みそ汁の文字通り一汁一菜。便所掃除から108回の礼拝行、滝行もあり、豊富なオプションから体調などに合わせて選べる。体験料は宿泊込みで1万500円。ミネラル温泉は24時間入浴可。TEL0745・72・4481。 (鶴)
恵光院(高野町)  
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「阿」観て宙を知る 湯船で外人と目礼
 高野山の宿坊で、密教の座禅である阿字観体験が人気と聞いた。観光協会で紹介された中から、恵光院にでかけた。同院でも1カ月に2〜3回だった阿字観教室が、2〜3年前からは開かない日がないほどだという。

 案内された部屋から見える中庭にはケヤキ、カエデ、シャクナゲ…。それらを揺らして入ってくる風が心地よい。まず浮世の汚れを流そうと浴場に行くと大きな西洋人が2人。視線が合い、目礼を交わしてともに湯船へ。「お国は?」「フランス、パリ」。翌朝の勤行と護摩焚きでも顔を合わせたが、どちらも奥さん同道だった。
恵光院

 阿字観体験は午後7時から、50畳ほどの道場で行われた。薄暗い中に梵(ぼん)字と月と蓮が描かれたボードと円座があり、そこが受講者の席。40代の夫婦、30歳前後の女性2人、60代の私の5人だった。日曜なので少ない方だという。

 正座して5分も待っただろうか。近藤大玄住職の講義が始まった時にはもう、足がしびれていた。住職の解説は含蓄に富んだ内容だったが、乱暴を承知で要約すると−。

 梵字は密教の根本仏、大日如来を表す「阿」。大日如来つまり宇宙と一体になる悟りを得るための座禅が阿字観で、悟るには心にゆとりを持つこと。それには呼吸が大切なので、その呼吸法の初歩である数息(すそく)観から教えるという。

 円座の座り方は、背筋を伸ばしてヘソ下に力を入れる。何も考えるなというと、そちらに神経が向かうから、頭の中で数を数える−。「さぁやってみなさい」と住職は姿を消した。どこかで見ているのかな? いや、そんなことを考えてはいけない。「一、二、三・・・」。

 15分ほどで住職が現れて終わり、全部で1時間。悟りには程遠かったが、少しだけ心がゆったりしたように思えた。宿泊料は体験料込みで料理によって1万〜1万2000円。TEL0736・56・2514。 (滋)
圓教寺(姫路市)  
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重文のお堂で座禅 虫を愛で舌も法悦
 姫路市郊外にある書写山(371メートル)の山上は、千余年の歴史を持つ西国霊場27番札所の天台宗・圓教寺の境内。数百年もの古樹の間に、コの字形に配置された重要文化財の巨大な3棟(大講堂、食堂、常行堂)や舞台造りの摩尼殿、開山堂などが建つ静寂の山で、「西の比叡山」とも呼ばれる。

 JR姫路駅からバスで約30分。歩いて上る6本の参道があるが、山陽自動車道脇から市営ロープウエーに乗った。年間約38万人が利用する「主参道」だ。
圓教寺

 山上駅から坂道をたどると、仁王門を経て約25分で摩尼殿に着く。泊まったのはその途中にある妙光院。山内に残る7塔頭のひとつで、長らく姫路市の職員保養施設だったが、3年前に寺へ返され宿坊になった。

 庭に面した16畳の仏間を中心に11部屋があるが、当日の宿泊は私だけ。夕食には創作精進料理が出た。がんもどき、切干ダイコンの煮物などの小鉢9品、ヒジキを練りこんだソバ、ナスとこんにゃくの田楽、生麩の佃煮などで計17品。目にも楽しく、つい箸が迷う。寝付けぬまま、しばらく廊下で虫の音に耳を傾けた。

 翌朝は摩尼殿で勤行を見学し、常行堂で座禅を体験(体験料1000円)。半眼で床を見つめながら1分間に3回ぐらいの呼吸数をひたすら数える。「数えることに集中して頭を空にします」と指導の僧。重文の堂での体験が感激を誘う。

 妙光院に隣接する約130人宿泊可能の圓教寺会館が本来の宿坊だ。西国巡礼者のための施設だが利用が減り、かわって企業や各種団体の研修、スポーツ団体の合宿などが増えた。最近は趣味の会などの小グループ、年配の夫婦、外国人旅行者も。40〜60代の女性が多いという。

 宿坊は1泊2食で圓教寺会館7350円、妙光院9800円。昼は塔頭の壽量院で精進料理の本膳(5250円と1万500円)、妙光院で創作精進料理(3675円)、圓教寺会館で幕の内弁当(1000円)が味わえる。要予約。圓教寺会館はTEL079・266・3240。 (清)
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