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娘が20歳を迎えた記念に昨年暮れ、トルコへのツアーに参加した。「西洋と東洋の文明が重なったところだから」と、トルコを選んだのは世界史好きの娘。8日間でイスタンブール歴史地区、トロイの考古遺跡、ヒエラポリスとパムッカレ、ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群。4カ所の世界遺産を訪ねることへの期待を語る。
関西空港からイスタンブールまで直行便で13時間。「パリに行くのと同じ時間。地図ではパリの方が遠いけど、地球は丸いから同じような距離」と説明する娘に、旅の主導権を握られそうな予感。
幸い二人とも、どこでもすぐ眠れるタイプ。暁闇の空港に元気よく降
り立つと、息つく間もなく迎えのバスで観光開始。まず、イスタンブールの象徴ともいえるブルーモスクへ。早朝の薄明に6本の
尖塔を突き出す建物は幻想的。赤いトルコじゅうたんを敷き詰めた内部に入ると、ほっと心が落ち着く。娘には「それはただ、座れて足を伸ばせたからよね」と見すかされた。
昼食で初めて現地食に出あう。サラダ、レンズ豆のスープ、トルコ風ハンバーグのキョフテ。香辛料がよく利いており、同行の老夫婦は「どうもこの香りは…」と食べ残したが、娘も私も平らげた。二人とも味覚が似ており、食欲旺盛なのはうれしいが、ちょっぴり考えもする。世の男性たちは「結婚相手を決める時は、母親を見てから」というそうだから。 |
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スルーガイドとして世話してくれたのはネドさん(32)という日本語が達者な男性。まず教えてくれたトルコ語は「ギュナイドン(おはよう)」。翌朝、目覚めて娘に「牛ない丼」というと大笑い。「ギュナイドン」はツアー仲間の合言葉になった。
シュリーマンが発掘して古代を蘇らせたトロイ遺跡には、巨大な木馬があった。伝説で馴染みのトロイの木馬を復元したものだそうで、だれでも中に入れてまるで遊具。私には何層もの都市遺構以上に分かりやすいトロイの教科書だった。
ハードな一日が終わると、添乗員さんから明日の予定が告げられる。「モーニングコールは4時半で、6時出発です」。「わっ、はやっ」と思わず声に出たが、「安い料金でたくさん見学できるのだから、文句は言わないの」と娘にたしなめられた。1日目の移動距離は約350キロ。これは短いほうで750キロ走った日もある。
文化遺産に登録されてはいないが、聖母マリアが晩年暮らしたという家を訪れた。賛美歌を歌いながら迎えてくれる修道女。きれいな歌声が室内を満たし、心が洗われる思い。内部にはマリア像もあり、参拝する人が後を断たない。
ローマ帝国時代のエフェソス遺跡は強く印象に残った。大きな図書館の外壁が残っており、紀元前に栄えた文化の偉大さに、二人ともただただ感嘆。ネドさんの話では、クレオパトラとアントニウスもここを並んで歩いたそうだ。私の場合は隣にいるのは娘。「実際に見ることが出来て感動。ありがとう!」と感謝されては、頭に浮かびかけた留守番役の夫の顔もはかなく消えた。
ネドさんは折に触れて日本とトルコの友好についても話してくれた。1890年にトルコ軍艦が和歌山の串本沖で遭難した後、山田寅次郎という人が義援金を集めるなどして両国の架け橋になったという。「もっと日本のことも勉強しなければね」という娘の言葉に私も同感。
トルコの名所といえば、まず思い浮かぶ奇岩のカッパドキア。二人とも最も楽しみにしていたところだが、自然のいたずらとも思える不思議な造形の岩石が林立し、その地下に築かれた広大な都市は期待に違わぬ驚きの世界。長距離移動のバス旅の疲れも忘れた。
カッパドキアからアンカラに向かい、空路でイスタンブールへ。フリータイムを利用して散歩に出ると、タクシーがクラクションを鳴らし「乗らないか?」と娘に声をかける。買い物していても話しかけられるのはまず娘。「もてるのは娘ばっかり」とこぼすと、母娘で参加した他の2組のお母さんも同じ嘆き。「結局、男って…」で落ち着いた。
この2組とは食事で同席することが多く、親同士「女親ならではの心配ごと、言っとかなきゃってことあるのよね」といった話で盛り上がった。その後は決まって「あんなことまで話して…」と娘が口をとがらせ、でも、すぐ仲直りの繰り返し。
旅の途中、3組の母娘は何度となくツーショットの記念写真を撮りあいっこした。思ったのは「息子ならきっと嫌がるんだろうな」ということ。そして、日本にいれば娘とこれほどの時間を共にすることはなく、互いに新しい面を発見できたこと。旅ならでは、を実感できた8日間だった。
(岩本佳子=写真も) |
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