ニューシニアの必読紙「フロンティアエイジ」
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2008年4月号第5面  
旅−歴史を歩けば  
魅力の吉野路 色濃く残す南朝の痕跡
    
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   奈良県の吉野地方といえば、千本桜の吉野山を思い浮かべる人が多いだろう。国宝の仁王門や蔵王堂がある修験道の金峯山寺、南朝の忠臣・楠木正行が戦陣に臨む前に門扉に歌を記した如意輪寺などの名所も数多い。桜を愛で、これらの歴史遺産を訪ねれば吉野を知った気になるが、吉野山は吉野地方の北の一部。面積にして県の半分を占める吉野には、もっとお勧めしたい場所がある。
三之公御所跡

 大阪北部に住みながら、吉野に足繁く通いだして10年ほど経つ。県北部の生駒市に住む友人と共に、県内の主要な山を全部登ることにした。ちょうどそのころ、朝日新聞奈良版用に古社寺を巡る連載の原稿依頼があり、喜んで引き受けた。吉野にはあまり知られていない多くの神社、仏閣があり、その取材をかねて山登りをしようと考えた。

 トンネルの開通で旧道が荒れ果てた吉野町と川上村の境界、五社峠(476メートル)で川上鹿塩神社という小さな社を訪ねたことがある。なんとそこは、本居宣長が『菅笠日記』で紹介している式内社だった。またある時は、熊野古道小辺路ルートにある伯母子岳(1344メートル)に登るため野迫川村に出かけたら、平清盛の孫、維盛終焉の地伝説の場所だった。私にとって吉野は、いつも大発見の旅である。
 
豊かな自然 温泉も20余  
   吉野へは、近鉄吉野線沿線の大淀、下市、吉野の三町以外は国道が頼り。ただし、バスの便数は少ない。時刻表をしっかり調べて出かけないと難儀するが、車で出かければ道は空いていて楽しいドライブ。主なコースに168号、169号、309号ルートがある。
川上村朝拝式

 日本最大の村・十津川村を縦断する168号沿いは、建武中興や明治維新のさきがけの動きが起きた歴史の舞台。近年五條市に合併した旧西吉野村には、後醍醐をはじめ後村上、長慶、後亀山など南朝系天皇の御座所や皇居として使われたと伝わる賀名生皇居跡の屋敷が残る。

 同村と南の旧大塔村には、江戸末期に倒幕ののろしをあげた天誅組ゆかりの史跡があちこちに残る。歴史遺産だけでなく、十津川村では長さで日本有数の297メートルという谷瀬の吊り橋、「源泉かけながし100%」の十津川温泉や上湯温泉が有名だ。

 169号は、夏に涼を求める人でにぎわう大台ケ原への登山口。また、川上村や上北山村は後南朝秘史の舞台でもある。毎年2月5日に川上村の金剛寺で行われる「朝拝式」は、吉野を象徴する神事だ。南朝再興を目指した後醍醐天皇の子孫が隠れ住んだ山中の御所、三之公で行われていた拝賀式が、550年の時を超えて今も受け継がれている。
ニホンオオカミの像

 この神事が広く知られるようになったのは、戦後のこと。今年の祭日を見学できたが、式次第は後南朝の最後の南帝(自天王)をまつる神殿に供物をささげ、遺品の鎧兜を拝見し、お墓に参拝するだけでいたってシンプル。だが、それゆえに、かえって歴史の重みを感じた。

 168号と169号にはさまれて南北に連なる山並みは大峰奥駆道。世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」のメーンロードである。尾根を伝う道は厳しく長いが、登山の醍醐味が十分に味わえる。ただし、日本アルプスと違い、弥山から南は途中で食料補給場所がなく、縦走するにはかなりの覚悟がいる。残念ながら私にも歩けてない区間がある。

 その大峰奥駆道の最高峰八経ケ岳(1915メートル)は近畿の最高峰。北の弥山(1895メートル)との間の尾根筋には、7月中旬ごろに天然記念物のオオヤマレンゲが咲く。他に例の少ない群生地だけに、足に自信のある方には、ぜひ一見を勧めたい。また、東吉野村は日本最後のオオカミ捕獲地。そのしるしが、ニホンオオカミの像とともに立つ。

 このように2、3の例をあげるだけで理解してもらえるように、吉野は限りなく奥深い魅力に満ちた地。山深くに分け入らずとも、車で行ける場所でも十分にその魅力に触れられる。そして20カ所以上もの温泉がある。 (高橋 徹)
 
奈良の新しい魅力巡礼テーマに提示 ガイド本を県が刊行
 
   東大寺や法隆寺など定番の名所だけでなく、幅広い奈良の良さを紹介し、多くの人に足を運んでもらおうと、奈良県が刊行準備を進めていた『奈良・大和路 まほろば巡礼』=写真=が3月27日に小学館から発売された。平城遷都1300年記念事業の一環で、監修者の千田稔・同県立図書情報館館長(国際日本文化研究センター教授)は「従来にないガイドブックができたと思う。これを持ってゆっくり巡って欲しい」と語っている。
まほろば巡礼

 同じ古都でありながら、奈良の悩みは京都と違って観光客が日帰りしてしまうこと。宿泊施設や夜の観光場所が少ないのも一因だが、名所・旧跡を有機的に結び、案内するシステムが十分に開発されていなかった。

 ハード面の整備はすぐには出来ないが、「新たな奈良の魅力」を紹介する案内書を作成しようと、県は一昨年10月、千田館長を代表に、万葉学者の上野誠・奈良大学教授ら奈良を良く知る専門家に編集委員を委嘱。その結果「奈良巡礼」をコンセプトに従来と違った切り口で迫ることとし、「国宝仏」「塔」「万葉故地」「竜神」「悲劇の皇子」「峠」「野仏」など20のテーマをたて、その巡礼をアドバイスする本にまとめた。惹句は「大人になったら奈良へ行こう」。

 テーマごとに菅谷文則・滋賀県立大学教授、青山茂・帝塚山短期大学名誉教授ら、その道の専門家が案内するスタイルで本紙の高橋徹編集委員も案内人として参加。写真(オールカラー)や地図もふんだんに盛られた。A5判192ページ、定価1995円(税込み)。
 
     
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