ニューシニアの必読紙「フロンティアエイジ」
毎月第1水曜日に発行をしています。 フロンティアエイジ
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2008年5月号第1面  
79歳 北極を往く 「白い虹」消える日願い
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  ドキュメンタリー工房・鈴木さん
 
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北極とは思えない薄い氷の海
  朝日放送で32年、制作会社を立ち上げて20年−ひたすらTVドキュメントを送り出してきたドキュメンタリー工房(大阪市北区)代表の鈴木昭典さん(79)がまたひとつ大きな足跡を刻んだ。

 スタッフを指揮して地球の危機を描いた「白い虹〜北極に出現した異変 加速する地球クライシス」が、4月18日の第49回科学技術映像祭で文部科学大臣賞を受賞。衰えを知らないスーパー現役は、さらに新たな北極点での仕事を準備中という。(む)
   過去2回の北極取材とデータの蓄積で「北極に07年、間違いなく異常事態が起こる」と確信していた。昨年7月、カナダ沿岸警備隊の砕氷船ルイ・サンローラン号がカナダ、アメリカ、日本の科学者24人を乗せて北極圏へ出るのを知り自ら乗船取材を申請。「研究者でも30代が上限。万一の時に対処できない」と断られ、やむなく向平由子ディレクターを代役とし、船舶FAXで取材チームを遠隔指揮した。
セイヨウタンポポ
春を彩ったセイヨウタンポポがミクロン単位の綿毛で気流に乗り新天地へ旅立つ=八尾空港で
季々彩々 写真 青井 捷夫

 7月26日に出港したルイ・サンローラン号がバンクス島西部海域に入ると、北極圏とは思えないシャーベットの海が広がっていた。地球温暖化で水温が上昇した太平洋の水が北極圏に流入したためだ。ヘリで空撮し、海中にもカメラを入れてボロボロになった「北極」の現実をとらえた。

 「白い虹」とは氷盤が溶けて露出した海面から立ち昇る霧に光が当たり、虹のようなアーチを描く新風景。地球が発する「恐怖のサイン」だ。科学者たちが解析するナマの情報とともに、世界で初めてハイビジョン映像に収められた。

 鈴木さんは、アラスカ・シシマレフ島で36日間の船上取材を終えたチームと合流。融氷と高波による地盤崩壊で家を失い、全島移住を決めたイヌイットたちの姿を2週間、寝袋暮らしで収録した。

 8月には衛星写真で北極海を覆う氷の広さが05年より2割も減り、観測史上最小を更新したことが報じられていたが、朝日放送・テレビ朝日の環境スペシャル番組として11月に放映された「白い虹」が示す実態は大きな衝撃を与えた。
 
半世紀余をTVに賭け  
 
 
イヌイットの村長(右)と話す鈴木さん
  鈴木さんがこの道に入ったのは民間放送夜明けの1956年。摂南工専(現大阪工大)を卒業後、電波技術者として八尾の第5米軍基地などで7年間働き、日米の工業・技術力のあまりの格差、占領政策をめぐる歴史観の相違を、米国側から見たことが報道人として歩む動機になった。

 日米開戦、新憲法誕生秘話などの「ドキュメント昭和」シリーズ作(テレビ大賞)や、五百旗頭真氏(現防衛大校長)が米公文書館でつかんだ「日本分割占領案」文書から開戦初期以来の米国戦略に迫った「トップ・シークレット」(放送文化基金・特別選奨)など、世界40カ国を歩き、古代史、文化人類学、医学、環境問題など幅広いジャンルにわたる取材で、朝日放送時代に18作品、ドキュメンタリー工房では25作品が芸術祭優秀賞などを受けた。

 50余年、体を張って真実を探り、体を削って完璧を求めてきた。手術のための入院5回。6年前にがんで胃を摘出した時には、すべてをカメラマンに記録させた。今は帯状疱疹と闘う。「入院中も医学書で研究し、リハビリに集中する。もうアカンとは考えない人」(同工房・平岡磨紀子専務)だ。

 「情報過多が世界をあらぬ方向へ引っ張りかねない時代。ジャーナリストがしっかり務めを果たさねばならない。体の動く限り働く」。鈴木さんの思いはなお熱い。ドキュメンタリー工房はTEL06・6451・1119。
 
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