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1泊2日の日程で、南紀へ出かけた。観光スポットを巡るのではなく、和歌山県観光連盟が企画した「農業体験と町並みウオークの旅」。訪問先の日常的な暮らし空間の中で人々と交わり、作業を学んで非日常の生活を体験する旅である。近年、南紀では体験メニューを織り込んだイベントを催す市や町が増えているという。代表的な2カ所を紹介する。 (高橋 徹) |
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| 廃校を拠点に学びと楽しみ |
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まず向かったのは「秋津野ガルテン」。昨年11月、田辺市上秋津にオープンした。グリーンツーリズムのための客室、レストラン、各種作業場などをもつ。上秋津地区の住民と応援団計489人が出資した農業法人会社「秋津野」が運営している。
上秋津は、田辺市の中心部を通って田辺湾にそそぐ右会津川の上流域にある。川岸に迫る山の斜面を切り開いた段々畑には、ミカンや梅の木が植えられている。秋津野ガルテンは、廃校となった小学校の校舎と校庭を利用したもので、木造2階の建物が郷愁を誘う。
バスで大阪を8時半に出発して昼前に到着。レストランの前ではすでに、中年女性のグループがオープンを待っていた。「安くておいしいと聞いたので、一度、食べてみたいと思って…」。隣町からきた人たちだった。
新鮮な食材を生かしたヘルシーメニューが約30種。「スローフードバイキング」のランチは900円で、調理した人たちのもてなしの心が伝わってくる味わいだった。ボランティア副社長の玉井常貴さん(65)から、秋津野ガルテン誕生までのいきさつを聞いた。
上秋津は市街地に近いことから、年々人口増加が続いている。平安時代からの古い歴史をもつ集落だが、その特色が消えることを憂えた有志たちが1989(平成元)年に「上秋津を考える会」を立ち上げた。考える会はやがて秋津野塾に発展。「地域おこし事業」をすすめ、1996年には農水省の「豊かなむらづくり」表彰で、近畿初の天皇杯を受賞した。
それが刺激となり、都市と農村部の人々が交流し、共に楽しむための「農を活かした」組織と、施設の「秋津野ガルテン」づくりをすすめたという。ビジターの数は年間9000人を目標にしたが、3カ月で達成した。
体験メニューは、梅やミカンの収穫、芋掘り、山菜採り、備長炭風鈴作り、ジャムやジュースづくり、間伐、シイタケ栽培、炭焼きをはじめ20ほどが用意されている。他にミカンの樹オーナー制度や貸農園もあり、観光旅行の宿としての利用も大いに歓迎している。
秋津野ガルテンのスタッフたちに伴われ、段々畑でミカンもぎしながら、栽培の現状を聞いた。ここで植えられているミカンは約60種。1年を通して何かが味わえるそうだ。甘いポンカンをほおばりながら南を望むと、遠くに海が見えた。 |
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| 多彩な催しで海の恵み体感 |
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翌日は熊野那智ガイドの会会長の池本泰三さん(71)の案内で那智勝浦町を散策した。那智の滝や那智大社、それに漁業と温泉町として知られる町。昭和30〜40年代は新婚旅行客も多く、大変なにぎわいだったという。
現在でも生マグロの水揚げ量は、日本一だが、観光客数は年々減少ぎみ。そこで昔日のにぎわいを取り戻そうと、同町観光協会と温泉旅館組合が協力、この春に催したのが「南紀勝浦温泉町並み博覧会」。
博覧会といっても、特別な会場を設置しての大イベントではない。熊野列石ツアー、那智曼荼羅参詣ツアー、熊野古道ウオーク、マグロ市場の見学、魚の調理体験をはじめ、町内だけでなく、3月1日から31日まで近隣の太地町や新宮市も含めた場所で行われていた22の事業の総称だ。
補陀洛山寺の千手観音菩薩特別拝観のように、この期間にしか実施されないものもあったが、私たちが見学、体験したのは、熊野比丘尼による那智参詣曼荼羅の絵解き、マグロはえ縄漁に使われた「ビン玉」を飾り玉にするロープ編み体験、作家・佐藤春夫ゆかりの地を訪ねながら日本一短い川・ぶつぶつ川(全長13・5メートル)へのウオークなど、予約すればいつでもOKのイベントばかり。
いずれも初体験で、早春の一日を十分に楽しめた。温泉と熊野詣でが観光資源だった南紀が、大きく変わりはじめているのを実感できた。
問い合わせは和歌山県観光連盟TEL073・422・4631▽秋津野ガルテンTEL0739・35・1199▽那智勝浦町観光協会TEL0735・52・5311へ。 |
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