ニューシニアの情報新聞「フロンティアエイジ」4月プレミアム号
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2009年4月プレミアム号第4−5号 プレミアム号index
 
春を歩けば心も弾んで
 
半木の道  
賀茂の瀬音聞き 紅桜のトンネル
 
半木の道
 京都市民の散歩道、半木(なからぎ)の道は、賀茂川の河川敷左岸、北山大橋から北大路橋間800メートルほどの堤防の道だ。まっすぐで起伏のない短い道なので、近くにある上賀茂神社、下鴨神社、府立植物園、北山通りなどの人気スポットに心を奪われてしまいそうになる。

 ちょっと風変わりな名のこの散歩道は左京区下鴨半木町、京都府立植物園の西側を走り、植物園の中の半木神社に由来する。賀茂川の上流にあった流木神社の一部が洪水で流され、その漂着地に社殿をつくったので、「ながれき(流木)」がなまって「なからぎ」神社になった、という。

 植物園は1924(大正13)年に開園した日本初の公立植物園で面積24ヘクタール。その中にひっそりと素朴な社があり、鎮守の「なからぎの森」はムクノキ、ケヤキ、シイ、カシなどの古木が繁って下鴨神社の「糺(ただす)の森」と同様、古代の山城盆地の植生を残す。神社創建の時代、付近では賀茂氏と秦氏が勢力をもち、養蚕や織物業の生産が盛んだったという。
半木の道

 「半木の道」は、京都商工会議所の「京都検定」にも出題されたことがある。当時の織物業と今の西陣織との関係などに想像をたくましくしながら、街角のいたるところに歴史があるこの街のすごさを感じた。

 4月、この道は桜並木のトンネルになる。約70本の紅枝垂(べにしだれ)、別名「半木桜」が咲く。ソメイヨシノが散るころから咲き始め、桜の名所の多い京都でも指折りのしだれ桜の名所という。

 賀茂川が高野川と合流し、鴨川になる出町柳まで流れに沿って歩いた。芝生や土道の上をのんびり歩き、流れの中の飛び石を伝って対岸の賀茂街道へ渡る。ユリカモメが乱舞し、サギが餌を狙って魚を待ち伏せている。古都の川沿いの道は静まって、爛漫の時のにぎわいを待ちかねているようだった。 (邦)

 ◆メモ 半木の道へはJR京都駅から市営地下鉄北山駅下車、徒歩10分。
 
葛城古道  
神々の気配して 大和三山を望む
 
葛城古道
 「神々がいたころの風景が残されている。スケッチしていて、神々がのぞき込んでいるように思う時がある」。奈良と大阪を分ける金剛・葛城の山麓に沿い、この地を支配した古代豪族が歩いたであろう葛城古道。その魅力にとりつかれ、西宮市から住まいを移して29年になる画家の瀧勇さん(65)はいう。

 近鉄御所駅の山手、大石の六地蔵から出発して13キロの健脚コースは、のどかな田んぼの地道がうれしい。道幅もルートも多様に変化するが、親切な道標が導いてくれる。山から下る水路の水が傾斜のままに音色を変え、まさに水の交響曲。

 山麓の九品寺を出て再び畦道をたどると、大和平野が足もとに広がる眺望スポットに出た。耳成・畝傍・香具山の大和三山が春がすみの中に浮かぶ。路傍のログハウス「さんさん亭」では宝塚市の大学講師松田高志さん(67)ら教育者が毎月2回集まり、農園を親子たちと耕し、学び合う実践の場にしているという。
葛城古道

 一つだけ願いがかなうという葛城一言主神社あたりから、道は昭和レトロの街道筋に変わる。醤油、清酒の醸造元や宿場町のにぎわいを語る大きな造りの家々が並ぶが人影はない。長い坂道をたどって極楽寺へ。ここからは天孫降臨の地と伝わる「高天原」へ山登り。

 大和朝廷誕生前の豪族葛城氏の祖神を祀る「高天彦神社」をめざす。杉の森の道は暗く、空気も冷たい。ギブアップしそうになった時、森を出た。平原に桜がほころび、ミツマタの花の向こうに高天寺橋本院のいらか。「桃源郷って、よくいわれます」という前田祐照住職の顔が仏に見えた。森厳の高天彦神社で打った拍手が快く響いた。 (む)

 ◆メモ 近鉄あべの橋から尺土で乗り換えて御所まで約40分。葛城山ロープウェイ、風の森へのバスは少なく御所駅バス停で確認を。
 
北国脇往還  
戦国へ思い誘う 路傍随所に道標
 
北国脇往還
 北国脇往還は中山道関ヶ原宿から伊吹山麓を縫い、浅井長政の居城があった小谷山を経て北国街道木之本宿を結ぶ40キロ余の道。戦国時代には秀吉がここを駆けて賤ヶ岳の合戦に臨み、江戸期には越前など北国大名の参勤交代の街道として栄えたという。この道のちょうど中間、小谷山近辺の7キロほどを歩いた。

 長浜市の国道365号・内保東の交差点、角に「北国脇往還」の標識があった。往時はここから1キロほどはうっそうとした「福良の森」で、街道きっての難所だったそうだが、現在は「プラザふくらの森」という地元の農産物なども販売するコミュニティー施設の後方にわずかに森が見られる程度。

 八島口の交差点で国道を離れて八島集落内の道に入る。街道の中で最も多くの道標が残っているこの集落の中で「左江戸道、右越前道」と刻まれた石柱を見つけた。

北国脇往還
   途中、少し寄り道をして、八島の西にある平塚集落内の実宰院を訪れる。小谷落城の際、お市の方、茶々などを一時かくまった寺という。尊勝寺、山ノ前の集落を経て本陣屋敷が残る伊部宿に。この集落を抜け田園地帯の左手に虎御前山、正面に小谷山を見ながら北に向かって歩くと小谷城清水谷の前に出る 。浅井家の武家屋敷が並んでいたところというが、今は小谷城戦国歴史資料館がポツンと立っているだけ。ここから郡上の集落に入り、脇往還を離れてJR河毛駅を目指して歩いた。

 街道を示す道路マップはなく、圃場整備で道が消えているところもある。土地の人に「小谷への道は?」と聞きながらの田舎道歩きだが、後方の伊吹山や前方近くの小谷山を眺めながら感じる春風が心地よい。古い道標や本陣屋敷を探索するという面白さもある。体力に自信があれば、小谷城址のある小谷山(495メートル)に登るのもまたよし。 (木)

 ◆メモ 内保東交差点へはJR長浜駅から高山方面行きバスで“プラザふくらの森前”下車。約30分。本数が少ないので、湖国バス長浜営業所(TEL0749・62・3201)で確認を。
 
暗峠  
犬も嫌がる急坂 生駒越えの難所
 
暗峠
 上方落語『東の旅』は、歩いて伊勢詣りをする大阪の男2人の道中記。生駒山中の暗峠(くらがりとうげ)を越える。「暗がりといえど明石の沖までも」の古句や、あまりに坂が険しく馬の鞍が反り返る「鞍覆(くらがえ)り峠」などの前置きがある。「ホンマかいな」と歩いてみた。

 午前11時、近鉄奈良線の枚岡駅で降り、枚岡神社の社殿前を抜けて国道308号に出る。駅からもそうだが、どこを歩いても上り坂ばかり。国道とはいえ、車1台が通れるほどの道幅で、つづら折りになって延々と続く。確かに勾配がきつい。気を緩めると2、3歩、来た方に引き戻されそうだ。救いは川のせせらぎと小鳥の鳴き声。振り返ると、木々の間から大阪市街が見渡せる。

暗峠
   黒のプードル犬を連れた夫婦が下りてきた。大阪側の麓から、毎日のように上り下りしているという。「上り坂では愛犬は抱いてやります」。犬も嫌がる急坂なのだ。やがて棚田と人家が見え 「暗峠」の石碑。12時20分だった。

 峠茶屋「すえひろ」は山田末弘さん(75)、三佐子さん(73)夫婦の経営。コーヒーをよばれる。標高455メートル。脇道を10分ほど歩くと、兵庫沖まで見渡せる絶景スポットがあるいう。

 落語会も開いたそうで、出演噺家の「くらがりと言えど明石の橋までも」「くらがりといえど昼間は明るいど」の色紙が残っていた。山田さんから「道中で馬が痩せ紐が緩んで鞍が覆る」のが名前の由来とも教えてもらった。

 ここからは下り坂を約1時間、大阪側より勾配は緩い。下りきると近鉄生駒線の南生駒駅に出た。 (ぶ)

 ◆メモ 大阪側には松尾芭蕉の句碑や観音寺なども。枚岡―南生駒は直線で約6キロ。
 
福知山線廃線跡  
トンネルを抜け 鉄橋渡るスリル
 
福知山線廃線跡
 JR福知山線の複線電化で86年に使命を終えた生瀬(西宮市)〜武田尾(宝塚市)両駅間の廃線跡約6キロを歩いた。生瀬駅で「おすすめできませんが…」といいながら教えてくれた通り、駅すぐの国道176号を左折、二つ目の信号で国道を渡り、細い道を住宅地へ下りると武庫川沿いの廃線跡に出た。

 すぐに橋を二つ渡る。「橋りょう上歩行禁止」の表示はあるが鉄板が敷かれていて歩きやすい。約10分で最初のトンネル。入り口に立つ「健康と笑顔に乾杯!」とした兵庫登山会の札がコースの人気ぶりを示す。

 トンネルに入って10歩ほどで闇。小さな懐中電灯では役立たず何度も壁にぶつかりそうになる。枕木や線路の敷石を踏み、長さ318メートルをそろそろ進む。次のトンネル(413メートル)まで約20分。枕木道の右は武庫川の渓流。水は岩をかみ、小さな滝もある。三田盆地や阪神間をゆったり流れる同じ川とは思えない「顔」だった。

福知山線廃線跡
   三つ目のトンネル(149メートル)から鉄橋(約80メートル)、またトンネル(307メートル)と続き、コースは川の右岸から左岸へ移る。鉄橋は通行止めで鉄製の側道を通った。

 トンネルの先に桜博士・笹部新太郎の演習林跡がある。桜の研究と保存に生涯をかけ水上勉の『櫻守』のモデルになった。宝塚市が約40ヘクタールを「桜の園」にし、住民組織「櫻守の会」が植樹などを続けている。

 ここから武田尾側起点までの1.3キロは宝塚市がJRから借りた遊歩道だが、短いトンネルがまだ二つある。途中に立つJR西日本の「告」は「事故があっても責は負いかねる」。眺めが良くスリルもあるが「自己責任」が問われる道でもあった。 (清)

 ◆メモ JR大阪から生瀬32分、武田尾38分。武田尾駅近くに旅館4軒の武田尾温泉。3軒で昼間の入浴ができ、「紅葉館」には無料の足湯も。
 
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