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| 田舎暮らしに新しい世界を求める人たちが増え始めている。気が付けば不況、就業難・・・老後への不安も募る今、ふるさとへの回帰、農という自然の中で確かな営みをつかみたいという人たちだ。和歌山・奈良・徳島でフロンティアたちに会った。 |
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| 120種の野菜の成長に喜び 加藤夫妻 |
夢満載の店を理想の地で 細木さん |
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和歌山県日高川町佐井。加藤友昭(68)・茂登子(61)さん夫妻が堺市からここに移ったのは06年5月。会社勤めのころから30年近く、日曜ごとに続けた野菜づくりで、畑を掘り起こさず植物の根をそのまま残して土づくりする「不耕起栽培」法を習得した。これを生かし定年後に田舎暮らしをしたいという佐藤さんに、ガーデニングの仕事をしている奥さんも賛成。土地を入手し、家を建てて生活するまでに1年かかった。
菜園は自宅周辺をはじめ5カ所3000平方メートル。ナス、キュウリ、トマト、パセリ、ブロッコリー、ニンニクなど年間120種類を育てる。野菜の作付管理表には播種と収穫の時期、品種、特性が細かく記されており、「この通り、年中暇がありません」。
化学肥料や農薬を使わない「安心・安全の新鮮野菜」が高く評価されて一時期、医療施設への出荷も計画したが、手が回りかねた。もっぱら自家消費するが、親戚や近所に配ると「シャキシャキして甘い」と好評だ。
夏場だと午前4時に起床。作業の大半は雑草刈りで、刈った次の日も伸びてくる。それでも「毎日、菜園に出たくなる。野菜の成長を実感できますからね」。たまに鹿や猿などの食害にあって腹も立つが、親しくなった近所の人の指導で今年から米づくりも始めた。堺市に出向く回数は、めっきり減った。
隣接の同町小釜本地区。古い民家を手づくりで改造し、田舎料理の「炭火焼き・まる貴」を、早ければ11月から始めるのは堺市の細木貴夫さん(61)。あと1年半は続ける予定という仕事は給食関係。当然ながら調理はお手のもの。釣りは本格派でお酒もたしなむ。音楽・映画鑑賞も大好きだ。そんなこれまでの人生と趣味を詰め込んだ「後半生の夢」を咲かせる。
目の前を流れる日本一長い2級河川・日高川ではアユ、アマゴ、ウナギなどが釣れる。鹿や猪、ホロホロ鳥などの肉も、野菜も豊か。それらを特産の備長炭で焼く。飲み物と料理1、2品を用意するが、セルフサービスが基本。調理場も備え、下ごしらえも客が自分でできる。予約制で中高年を中心にゆったりとした時間を楽しんでもらうことをコンセプトにしている。
広さは約120平方メートル。外観、インテリアはもらった廃材などを使った。3つの客室には焼き口の上に自在かぎ、所々にランプや絵画・書の額がかかる。ジャズや歌謡曲のCDなども聴け、100インチスクリーンで映画も楽しめる。
隣に自宅を構える細木さん。1週間に4日は泊まり込んで仕上げに余念がない。「もうけるつもりはない。安らぎの場になれば」といい、「定年になったら、では遅い。決めたらすぐ動こう」「自分の得意、趣味を生かそう」と田舎暮らしを望む団塊世代にエールを送る。実に頼もしいパイロットだ。
日高川町は川辺、中津、美山の3町村が合併して4年前に誕生。合併前から支援組織「ゆめ倶楽部21」が体験事業などに取り組んでおり、07年4月から今年3月までの2年間に22世帯43人が定住した。問い合わせなどは、ゆめ倶楽部21(TEL0738・54・0338)へ。 (鶴) |
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| ここで命をもろうた |
鉄の街から通いつめ5年 浜田夫妻 |
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滞在型市民農園のクラインガルテン。ドイツの自給自足型ミニ農園「小さな庭」をモデルとした戸建てラウベ(簡易宿泊施設)付きの菜園で、日本でも農山村の耕作放棄地を活用して都市住民向けに93年ごろからつくられ、全国66カ所にまで普及。思いのままに「農ある暮らし」が楽しめる。
「クラインガルテン曽爾(そに)」はそのひとつ。三重県に接する奈良県の東北端、ススキの高原で知られる曽爾村にある。高さ200メートルの柱状の絶壁が1500メートルにわたって続く天然記念物・屏風岩(標高868メートル)を背にした日当たりの良い東南斜面に、ラウベ付き菜園30区画が展開する。1000メートル以下の山々が視界に広がり、涼しい高原の風は爽快。
「奥香落の温泉へ来た帰りに寄り道し、その場で空いていた1戸に申し込みました。もう5年になります」。大阪市西淀川区で鉄工業を営む浜田嘉英さん(64)。自宅から車で1時間40分、1年のうち170日をここで過ごし、エンドウ、ナス、サトイモ、アスパラガスなどの畑仕事に熱中。「働きすぎて胃、ひ臓の全部とすい臓の半分を摘出するなど、がんに腹中を蝕まれていたのに、今ではおいしくて一人前ペロリですわ。廃業まで考えたのがうそみたい。自然に助けてもろうた命です」。妻の良子さん(60)もにこにことうなずく。
休耕のまま荒れていた小長尾地区の棚田3.6ヘクタールを村の事業として整備、03年にオープンした。ラウベはキッチン、風呂、トイレ付きで43.2平方メートル、これに50〜100平方メートルの畑地が付き年間利用料50万円。家族、友人などの参加も自由。耕運機、草刈り機から鍬、鎌まで農具が無料で使え、地元農家の管理人土井潔さん(72)の指導で野菜や花づくりが楽しめる。
開設初年度から5倍、150人の申し込みがあったほどの人気。最長5年まで利用できるため、空き家が出るのは、毎年3〜7戸程度。これにも3倍以上の希望が集まる。09年度の入居者は大阪府16戸(区画)、奈良県内13戸、京都府1戸。50代2割、60代7割と定年世代が圧倒的。1年のうち半分以上をここで過ごす夫婦も珍しくない。屏風岩などのトレッキングに、シールラリー「ゆらん」の人気投票で3位にランクされた「お亀の湯」(村観光振興公社運営)など自然に恵まれているためという。農園の年間滞在者はのべ4000人から5000人になる。
土井さんらの小長尾地区では、併設の水田20アールでの田植えや盆踊り、忘年会、しめ縄づくりのイベントを入居者・家族たちと共催して交流する。そんな村の暮らしに魅せられ、2年間滞在のあと、村内に家を求めて住民になった夫婦がすでに2組。大阪北部からラウベに住所を移して年中滞在し、入居期限切れを前に今、新居探し中の夫婦もいる。問い合わせは管理事務所(TEL0745・98・2111)へ。 (む) |
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| NPO設け過疎地に活気 近藤さん |
耐震度抜群のハウスで誘致 |
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ドイツで生まれたクラインガルテンが、長野県松本市での導入を皮切りに日本でも広がりを見せ、徳島県三好市三野町に07年に生まれた「三好タウン 愉流里(ゆるり)」も、間もなく20戸すべてが埋まりそうだ。
大阪を車で出て淡路島へ渡り、徳島自動車道へ入って美馬ICを県道12号へ下り、さらに西へ15分ほどで右折。阿讃山脈山麓の畑地に「ふるさと力(ちから)」の大きな看板が見える。愉流里を開発したNPO法人の名だ。茶色い板壁の小ぢんまりした木造家屋が立ち並ぶ「愉流里」に着いたのは夕刻だった。
舗装された道をはさんで左側にIターン・Uターン者向けの農園付き分譲住宅(約272平方メートル、住居部分約67平方メートル)が9棟、右側には滞在型市民農園施設(約180平方メートル>、住居部分約42平方メートル)11棟が立つ。分譲は1200万円前後、滞在型は年契約で、賃貸料の月額は5万円。未住の住宅もあったが、大半の家の畑には野菜が実り、花壇に花を咲かせている。別に広い共同農園がある。
明かりの灯る1軒を訪ねた。大阪・摂津市出身で9月から定住を始めた西尾文雄さん(71)と美津子さん(70)夫妻。文雄さんは縫製業だったが、余生はのんびり好きなことをしようと考え、ここに来たという。三野町を気に入ったのは「北に山脈があって南には吉野川。アユ釣りが好きですねん。西には祖谷渓や温泉もあるし、行くところが多いですよ。天気が良かったら畑仕事します。こんなええとこ、おまへんで」。
農協が農作業の要領を指導し、農具も貸してくれるうえ、地域住民との交流も仲介してくれる。美津子さんも「近くにスーパーがあるし病院もある。生活費が安いので、もう絶対に離れません」と惚れ込んでいる。
建築方法にもひかれたという。杉の間伐材を特殊なブロックに切り、金属棒に通しながらレンガを積む要領で壁状に組み立てる「積み木ハウス」工法。「風通しのええこと。木の断熱効果で省エネ、夏は涼しく冬は暖かい」。この工法を採用したのが、地元出身で三好タウンを進める「ふるさと力」の近藤貞治副理事長(61)。大阪・日本橋で建築業を営なんでいたが、宮崎県の間伐材ブロック発案者と提携して取り組んだ。この工法は、震度8以上に耐える耐震構造だと国交省で認定されている。
近藤さんが愉流里開発と積み木工法を組み合わせ「皆さんに喜んでもらえる仕事」と意気込む理由は(1)人間味を取り戻して余生を送れる場の提供(2)故郷である三好の過疎化食い止め(3)間伐材の需要を高めることで山を再生させる(4)地震に強い木造住宅の普及。そして(5)エコに貢献できる。
「家業の方は息子に譲りまして、私の余生はこっち。これからは人さまのために尽くしたい」。近藤さんはやる気満々だ。問い合わせはNPO法人ふるさと力(TEL0120・171・094)へ。 (崎) |
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