ニューシニアの情報新聞「フロンティアエイジ」6月プレミアム号
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フロンティアエイジ=新時代の開拓者 ホーム ホーム お問い合わせ 広告情報 会社案内 所在地
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2010年6月プレミアム号第4−5面 プレミアム号index
  13億が世界と出会う184日
 
上海万博 中国館
 「より良い都市、より良い生活」をテーマに5月1日に開幕した上海万博。市内のいたる所に「世界在?眼前」(世界があなたの目の前に)が掲げられ、私たちが訪れた4週目の週末の入場者は36万人を記録。直前のリハーサルで日本のテレビにも流れた混乱ぶりとは打って変わり、人々は数時間単位の待ち時間にも整然と列をつくり、「中国がここまできたことを誇りに思う」「日本にもっと学びたい」と目を輝かせる。高揚感とさらなる飛躍へのエネルギー。この国の計り知れない未来を感じた。(向平すすむ)
  上海万博 整然として熱気と誇り
 
バスも車も電池式 ボランティア活躍
 
5時間待ちの札が立つサウジ館前
 「取材記者証」を受け取るため、浦東国際空港から車で万博事務局を目ざす途中、同行した朝日放送の取材グループが「どうよ。3月の事前取材の時は、道路は至る所工事中で露店もいっぱい並んでいたのに」。分離帯は花のベルトで仕切られ、歩道にはペチュニアの盛り花、屋台があった場所は花壇に一変している驚きだ。通行規制されているのか車の量も少ない。事務局正面には「全力以赴」(ベストを尽くそう)の大看板が掲げられていた。

 黄浦江の両岸5.28平方キロに計246の国・国際機関と企業・団体のパビリオンが連なる。過去最大規模の広大なエリアを移動する膨大な人の群れをスムーズにさばき、快適に過ごしてもらうための工夫にも感嘆した。
シャトルバス。スタッフ車

 乗降自由のシャトルバスがひっきりなしにやってくる。スタッフ用の車両を含めすべて環境に優しい電池式だ。停留場や道路沿い、パビリオン周辺などの要所には、制服のグリーンのポロシャツを着た学生ガイドが立つ。ほとんどが英語を話せ、日本語ガイドも少なくない。交通費+昼食代だけのボランティア。上海の大学生7万7000人が登録し、平日は6000人、週末には8000人が会場内に散る。
学生ボランティアと清掃スタッフ

 厠(かわや)と表現するトイレは、水洗式で1度に100人余が使える規模のものがあちこちに。専従員がいて汚れはすぐに拭うなど清潔保持に努める。会場内のごみも、収集セットを携えた要員が行列の中まで入り込んで拾うからほとんど見当たらない。

 最大のストレスは入場待ちの行列だが、移動の際に家族が分断されて困惑の声が上がると、すかさず武装警察隊員が残された家族を前へ移動させるなど手際がいい。車いすの人や高齢者は専用通路から入場できるが、介助者として数人が続いても大目に見てもらえる。誇りは寛容を生み、マナーの向上も促すようだ。かつての我々のように。
日本館も人気の的 5時間待ちはザラ
会場内
 3日間かけて広い会場を歩き回った。どこも長蛇の列。映像・音響技術を駆使した中国、日本、サウジアラビア、日本産業館はピーク時には5時間待ちとなる。ドイツ、スペイン、スイスなど欧州勢も4〜2時間。記者証があっても人気館は取材予約や行列しないと入れない。これらを中心に入館したのは計15館。万歩計は1日1万8900歩。鍛えていない脚にはきつかった。
ドイツ館
 限りある資源の有効利用を訴える折りたたみ式車いす、靴、キッチン用具、草刈り機など最新のデザイン・アイディアあふれる暮らし用具に目を奪われた。呼び物は2階建て円形ホールの中央につるされた大鉄球が暗闇の中で繰り出す映像パフォーマンス「エネルギーの源」。噴出するマグマのように燃えだした球体は観覧者の声に反応して揺れ始め、場内の「ハオ(好)」「ハオ」の絶叫で今にも破裂せんばかり。「地球を動かすのは私たち」を体感するメッセージで終わる。
スペイン館
スペイン館
 籐で編んだパネル8500枚で全館を覆い、かごに見立てた外装。館内に入ると一転、情熱の国らしく大歓声にわくサッカー競技場、フラメンコの狂熱の乱舞を大映像で表現。出口近くでは奈良の大仏をやや小ぶりにしたほどの赤ちゃんの像が頭を振り、泣き、笑い、甘える表情を浮かべて人を集める。
スイス館
 二つの円筒をつないだビルの外装4000平方メートルのネットで赤い花びらのような太陽電池1万個が点滅する。円筒の一つは内側を緑で覆った空洞で、6人乗りリフトで最上部へ駆けのぼり、緑野を模した屋上部を遊覧して帰る4分間の「森の散歩」が人気。アルプスの国スイスならではの趣向に行列が絶えない。
中国国家館
 最大の人気館だが1日の入場は5万人に限られ当日券がないと入れない。朝9時にとてつもない広さのゲートが開き、ボディーチェックを受けた後に配られるがわずか15分で終了。手にした人たちは幸運の記念撮影をするほどだ。取材陣も同時刻にメディアセンターで先着200枚限りの配布。ようやくゲットしたものの入場に特別扱いはなく、昼間と夕刻に2度、前まで行って長蛇の列に断念。3度目に20時半から35分並んで入場を果たせた。

 中国の冠を模した12階建てのうち3階以上が展示エリア。エスカレーターとエレベーターを乗り継いでたどり着く。改革開放30年の歩みと展望を描いた映像に続き、宋時代の古代都市を描いた国宝級絵図「清明上河図」が幅100メートルに拡大されて映る。図中の人物や牛馬がアニメのように動くのは驚き。トロッコ列車に似たカートに乗り、映像のトンネルをくぐって10年後の都市と暮らしのシーンで終点。乗客から思わず拍手が起きた。
日本館
 「開幕の1週間前から取材を申し込み続けているけど、1カ月先まで無理とかで、最近は電話にも出てもらえない。日本産業館で評判の一人4万円の日本料理店も6月末まで予約でいっぱいだって」と、メディアセンターで出会った中国・河北日報の郭偉記者は嘆く。尾高健・広報担当も「欧州メディアを中心に1日8〜10社の取材が続いているんです」と超多忙を裏づける。

 人気の理由は紫色の蚕形の日本館が、構造を覆う太陽電池を仕込んだテントと6本のチューブで光と空気、雨を取り入れ、動力、照明から空調、水までまかなう未来型の「呼吸する建物」であるのに加え、世界初で最大規模のロボットや最先端映像などで他では見られないパフォーマンスを展開することにある。そんな創造力を生み出した日本の文化と風土、遣唐使から現代のトキ再生までの日中交流史がロボットも交えた能と昆劇による合作オペラで上演されると感嘆の拍手で包まれる。
日本産業館
 旧造船ドックを活用した日本企業の最先端展示館は、空調メカでつくられた海抜1500メートルの「高原の風」が行列で汗ばんだ客を迎える。壁も床も天井も紙製の劇場の大画面に、女子高生の「カワイイ」ファッションなど最新の日本が映し出されるたび、若者たちが身を乗り出して見入る。3Dシアター「医療の進化」も人気。入れるのは7人に1人の「世界で一番きれいなトイレ」の抽選では、当落をめぐってざわめきが起きる。道頓堀から出店の「たこ焼き」をはじめ、かき氷なども大繁盛のようだった。
 
自信と共に学びの心も 未来への夢を育む舞台
 
紫の蚕の日本館はエコの最先端
  「世界が目の前に」を体感した中国の人たちは皆、多弁だった。ドイツ館を出てきた江蘇省の石油関連国営企業の担当者(50代)は「中国の経済力がここまで来たことを万博で証明できて誇りに思う。しかし、先進国のモノづくりに学ばねばならないことはいっぱいある。評判の日本館にもぜひ行きたい」と語る。天津から特急列車で13時間かけてやってきた祖母と若夫婦、子どもの一家は疲れた様子ながら「科学の進歩は素晴らしい」と口をそろえた。5歳の男の子の「一番」は「バイオリンを弾く日本のロボット!」。私たちの通訳・ガイドを務めてくれた李偉慶さん(44)は「子ども連れが多いでしょう。親たちはわが子に世界を学ばせようと懸命なのです」と解説してくれた。

 7万人を超える野外の案内員だけでなく、各館や施設にも数十人から百人単位の学生ボランティアが働く。実に膨大な数の若者が、かけがえのない学びの場に立ち会っている。私たちの入場に奔走してくれた中国館日本人接客担当ボランティアの上海交通大学大学院生朱容さん(23)は「チャンスがあれば、日本へ行きたい」と真っすぐな目を向けてきた。同じように話しかけてくる若者たちは何人もいた。
日本産業館も長蛇の列・たこ焼きも上々の人気

 高度成長へ沸騰した40年前の大阪万博。北陸の寒村から出てきた知人は、万博会場の片隅で土産用の焼き菓子を売ってチャンスをつかみ、後に製菓会社を起こした。「おカネが降ってくるように売れた。あれで飛躍できた」という述懐を思い出しながら、ロボットの像を脳裏に刻んだ5歳の坊やはどう育つのだろう、若者たちのキラキラ輝く目はどんな夢を映し、どんなチャンスへつなげるのだろうかと考えた。13億の民の中国。10月末の閉幕まで184日間の来場予測は7000万人だが、未来へ向けて巨大な渦が広がろうとしている。
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