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古いものを大事にしながら新しい創造を促す―難しいテーマを掲げたまちづくり戦略の基本に「文化」を据え、奇跡と呼ばれる都市再生を実現したフランス・ナント市。行きに世界遺産のモン・サン・ミシェル、帰りにパリを加えてこのまちを訪ねる「フランス流幸福論〜文化に触れる旅」を6月11日から8日間、フロンティアエイジの編集スタッフと紙面での呼びかけに応じた50〜60代読者の計19人で実施。「シンプルな暮らしの中で自立と誇りを失わないフランスの人たちに、これからの生き方を発見した」など、心を豊かにする文化の意味を体感する旅となった。 (むかひら・すすむ) |
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■ トラムとゾーン30 |
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ロワール川が注ぐ大西洋岸の町ナントは人口28万人でフランス6番目の中核都市。造船不況のために失業者があふれ、すさんでいた街を20年足らずで再生させたことで世界の目と人を集める。国鉄やエアバスなどが支社を設けて人口が増え、ホテルは満杯状態が続き、中心部の不動産はパリなみの価格での取引もある人気。
活気に満ちているのだが、車と人がスムーズに流れて街の雰囲気は落ち着いている。秘密はトラム(路面電車)を復活させたうえ、交差点をロータリー化して信号を取り外し、自転車専用道を新設したことにある。
公共交通の優先ぶりは半端ではない。トラムは3〜5両連結。低床タイプで乳母車、自転車はもちろん犬も乗れ、4人だとひとりあたり1ユーロ(165円)で1日乗り放題。路線のない部分をカバーするバスも連結車が多く、ともに3〜5分間隔で走る。
トラム路線と停留場ゾーンに入る車は時速30キロに規制され、バス専用レーンでは、横断する人さえ自己責任が問われる。 |
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■ 工場跡に文化拠点 |
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「西のベネチア」と言われた要所に、15世紀に築かれたブルターニュ大公城は、フランス国王が信教の自由を認めた「ナントの勅令」の舞台だが、廃屋同然となっていた。ナント市は15年かけて修復し、黒人奴隷交易という負の遺産を含めた水運、海運さらに工業、造船の隆盛から衰退まで、市の歴史と未来を考える博物館に生まれ変わらせた。今年2月のオープンから4カ月で入場者、城郭の散策者は50万人を超えた。
オペラハウスや教会などがある広場と周辺は車の進入を禁じ、芸術家たちの発表の場になっている。ちょうど造形作家西野達さんの新作「ホテルナント」が展示されていた。広場の女神像をパイプとボードで覆って居室を設け、3カ月の展示期間中は予約で埋まっているという。
こうしたプロジェクトを計画し、作家に依頼して費用を負担するのは市民主導の組織リュ・ユニーク。19世紀末創業のビスケット工場跡で現代アートの常設館と多彩なイベントを運営している。
かつて3万人が働いた造船工場跡にも各種専門学校、熟年・退職者大学、若手企業家のための貸オフィスが完成し、一角では高さ12メートル、40人を乗せて街を歩くゾウの巨大ロボットがエアバス技術者の手で完成間近だった。 |
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■ 「奇跡」のヒミツ |
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3泊4日のナント滞在中、付きっきりで案内してくれたのはエーロ市長の政策顧問であるジャン=ルイ・ボナン氏と現地在住の翻訳家沼口久美子さん。熟年・退職者の担当助役や社会福祉の実務責任者にシニアの暮らしぶりを聞けたし、地元テレビのニュースで私たちの訪問が流されもした。
ボナン氏から宿題をもらった。「私たちは文化こそ日常生活の推進力だと考えています。招きこむ文化は世界水準が基本。例えばここも寿司ブームだけど本物がない。日本の本職による寿司職人養成学校をつくりたい。いい先生いませんかねぇ」 |
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