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| 犬の散歩は誰がする |
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体のちっちゃな男が相撲取りになり、江戸の本場所に上った。町に戻っているのを見かけた町内の若い衆が声を掛ける。「江戸での出来は?」「勝ったり負けたりでございます」。遠い江戸でのこと。「全部勝ちました」でもバレないのに謙虚な受け答え。だが、よーくよく聞いてみると「向こうが勝ったりこっちが負けたり」の「全敗」だった。この男「しこ名を『大安売』に変えました。これからは誰にでもあっさりとまけてやります」。
上方落語『大安売り』という噺だ。子どもにまで負けることがあり、さすがに非力を悟って親方に相談する。「国へ帰って百姓をします」。この時の親方のせりふが「お前がやめたら犬の散歩は誰がする」「ちゃんこ料理は誰が炊く」だ。
曙や武蔵丸は200キロを超した。近頃の大相撲に彼らほどの巨漢はいないが、小兵力士には今も昔も体重のハンディーは大きい。そんな世界で、ちっちゃな男の良いところを見つけて励ます親方のせりふが、うれしい。泣かせる。
アメリカのプロバスケットボールで、田臥勇太選手が1ヶ月だけだったとはいえ、活躍の場を与えられた。2メートル余が当たり前の中で田臥は174センチ。俊敏な動きでその不利を補った。日本のラグビートップリーグも大型化し、体を直接ぶつけあうフォワードには、190センチ以上の選手がひしめく。そんな中で神戸製鋼の野沢選手が、169センチの体でシーズンを通して活躍した。
「お前なんかもう使うところ、ないよ」と思われてしまうと、悲惨だ。プロ野球ジャイアンツの清原選手は一時、そんな扱いを受けているように思えた。「負け犬」のレッテルを貼らず、「犬の散歩は誰がする」と言ってくれる、落語の世界の親方のような人が周りにいたら救われる。「俺もまだ捨てたもんじゃないんだ」と、頑張っていけるだろう。
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落語、漫才などの演芸から名せりふや名言、時には迷言を取り出し、その由来や裏話をお届けします。
(演芸ライター) |
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