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そんな奴おらへんやろ
  上田 文世
 
   ひびき「自転車で歩道を走るおばはん、前に人がおると、ベルやなくてブレーキをキキキキッと鳴らすやろ」
 こだま「そんな奴おらへんやろ」

 漫才の大木こだま・ひびきコンビは、このフレーズと、「往生しまっせえ」で大ブレーク。05年上方お笑い大賞の「大賞」を受賞した。

 古典落語にも、フツウでは考えられない人物が数多く登場する。『寄合酒』もその一つ。お金のない男連中が、宴会を開く噺だ。

 各自その才覚を存分に働かせ、酒、カツオ節、カズノコ、ネブカ等々を調達する。いざ料理となると、カツオ節の煮汁を捨てるのははもったいないからと足袋を漬け、ダシがらの方を山ほどいかき(ザル)に積んで持ってくる、ネブカを塩もみし、カズノコは炊くといった有様。男の手料理とはいえそこまでは、と思えるのだが、さて現実は−−

 96年10月の「週刊朝日」にこんな投稿があった。「娘が料理を習い始めた。帰宅しての報告。『今日さあ、ダシを取ったの。ザルにこしなさい、というからこしたんだけど、汁がいるんだってさ。捨てちゃった』」

 落語『道具屋』には、露天の店に首の抜けるお雛さん、脚の欠けた電気スタンドなどを並べて「どこぞのアホが買いにくるやろ」という店主が出てくる。その実話版とでもいうか、韓国・ソウルの市場では弦が2本しかないチェロ、受話器のない電話機、片方だけの靴などが売り物になっていたと、04年9月の朝日新聞が伝えている。

 去年11月、強度不足のマンション、ホテルが首都圏をはじめ奈良、福岡などで数多く建てられていたことが発覚した。強い地震があれば、倒壊の恐れがあるという。「そんな奴おらへんやろ」のはずが、強度を偽装する建築士、それを見逃す検査機関などが、現実にはいたのだ。信頼を逆手に取って金儲け、自己保身に走る連中は、「往生しまっせえ」どころの話ではない。  (演芸ライター
     
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