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塀越しに隣の庭に出た花は・・・
  上田 文世
 
   昨年末、ロシアとウクライナの間で、天然ガスの供給を巡って一悶着があった。天然ガスと言うと、日本と中国の間でも、係争中の事案がある。日中で境界線の解釈が食い違う中、中国側が東シナ海でガス田の開発に着手し、昨夏から操業を始めたからだ。日本側は、国内の開発会社に試掘権を許可し、中国とは話し合いを続けている。

 これについて、昨秋の小泉改造内閣で就任した二階俊博経済産業相は「平和的、友好的に粘り強く交渉する」と話し「外交は近所付き合いと一緒」と述べている。

  古典落語「鼻捻じ(はなねじ)」は、近所同士のちょっとした紛争がテーマ。塀を挟んで一方は商家、もう一方は漢学者の家だ。弥生(やよい)3月、商家の庭の桜が見頃になり、枝が塀を越えて、隣家の庭先でも咲き誇った。隣家の漢学の先生がこれを愛(め)で、勝手に枝を切り、自分も楽しむ。

  「無断で切るとは何事ぞ」。商家側の抗議に先生は歌で答える。「塀越しに隣の庭へ出た花は、捻じょと手折(たお)ろとこちら任せ」。ならばと商家側。芸者を呼び、庭で飲めや歌えの大騒ぎ。先生が塀の節穴から覗こうとすると、商家側は手でふさぐ。はしご伝いに塀の上から眺めると、先生の鼻を釘抜きでつまみ「隣の庭へ出た鼻は…」と、きつーいお返し。

  小咄「竹の子」も近隣紛争が題材。武士の家の庭に、隣家の竹の子が顔を出した。無断で取っては悪いと「曲者が侵入した。手討ちにする」と断りの使いを出す。隣家も負けてはいない。「せめて死骸は我が方に」

  そこで武士側。「既に手討ちにした。死骸は腹(原)に葬り、骨は明日、高野(厠=かわや)に納めます。これは形見です」と、竹の子の皮をばらまく。さすがの隣家も「既にお手討ちとなったか。あぁー、可哀(かわい)や、皮いや」。

  ガス田開発を巡っての紛争も「外交は近所づきあいと同じ」なら、小咄のような粋な解決方法はないものだろうか。 (演芸ライター)
     
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