ニューシニアの情報新聞「フロンティアエイジ」
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降るような日和ではない
  上田 文世
 
   桜が咲く頃、いつも思い出すことがある。福井大学の合格電報「アスワヤマニハナガサク」だ。

 87年3月、私は新聞社で家庭面を担当していた。女性投稿欄に届いたのが、この電文にまつわる1通。「甥が受験したが、電文の意味がつかめない。「花が咲くだから合格よ」「明日は咲くんやから、来年こそ頑張れやで」「補欠や。後で咲くということで」「体よく不合格ということでしょ」と家族、親類で一喜一憂した」という内容だった。

 正解は地元の花見の名所「足羽山(あすわやま)に花が咲く」で「合格」だった。文章の区切りを変えるだけで解釈が変わるのが面白く、さっそく採用した。

 戦国時代、武田勢が徳川(松平)の砦を攻め「マツカレテ タケタクヒナキ アシタカナ=松枯れて武類(たけたぐい)なき明日かな」の落首を送って揶揄した。徳川側は即刻「松枯れで武田首(たけだくび)なき…」と返す。嘘か誠か知らないが、濁点のあるなしを利用した見事なしっぺ返しである。

 「テンの有り無しで大違い。ハゲにケがあり、ハケにケはなし」は、古い漫才のネタ。落語「日和(ひより)違い」では、ある男が外出を前に天候が気になり、八卦見の先生に相談する。答えは「降るような日和ではない」。よかった、雨はないんだと出かけたら、土砂降りでずぶ濡れに。戻って掛け合うと先生が言う。「『降るような』と言うて『日和ではない』と念を押した。すなわち雨じゃ」

 ライブドア堀江貴文前社長の逮捕劇を見ていると、まるで、句読点や濁点を打ち間違えたかと思えるほどの転落ぶりだ。昨日までの新時代の旗手が、一瞬のうちに会社ばかりか、自身の株まで下げてしまった。

 「人間万事塞翁(さいおう)が馬」ということわざがある。逆境と順境は常に隣り合わせ。幸せの裏にある落とし穴を予測し、辛い時も楽しい明日を考え、つねに謙虚に生きよという戒めだ。それをいつも心にとめ、人生を歩みたい。 (演芸ライター
     
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