ニューシニアの情報新聞「フロンティアエイジ」
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もっちゃさくべしきび
  上田 文世
 
   「春に財布を買うと縁起がいい」。ラジオで女性パーソナリティーが話していた。「はる」は「張る」で、つまり「財布が張る」というのだ。日本語には同音異義語が多く、洒落(しゃれ)や語呂合わせが簡単に出来る。身の周りをちょっと見ても−−

 去年春、大阪南港であったミニチュアカーの「トミカ博」。新聞広告のコピーは「トミカく来てみてください」だった。街の洋服店が、スペアパンツ付きスーツを売り出した。その売り文句が「日本の夏は2本の夏です」。鮫軟膏を発売の薬局もやります。「ふしぶしの痛みサメ〜る」。警察の立て看板も負けてはいない。「そのバッグ狙ってますよ。後ろ(バック)から」

 居酒屋で「シュウマイはおしゅうまい?」、カラオケ店で「歌がうまいのは疑うまい」は「おやじギャグ」の典型。だが、若者にも洒落愛好者がいる。映画「ウォーターボーイズ」で注目を浴びた俳優の金子貴俊さんは、タキシードを着たサルが赤いドレスのウサギを「サル ウィー ダンス?」と誘う絵本『だじゃれどうぶつえん』が大のお気に入りという。

 上方では昔、洒落を口合(くちあい)といった。古典の『口合小町』は洒落尽くしの落語だ。餅屋の作兵衛さんがしきびを持って表を通るのを見て「もっちゃさくべしきび(紫式部の語呂合わせのつもり)」という女房。茶屋遊びから帰って「叔母貴のとこへいててな」とごまかす亭主に「おばき百までわしゃ九十九まで」。亭主を面白がらせて、何とか家にいさせようとする一心からだ。あまりにも強引な駄洒落の連発に、亭主も「こんな嫁はん、一人でほっといてどこへも行けるかいな。もう家にいてる」と約束し、めでたしめでたしとなる。

 タイミングよい洒落や冗談は、雰囲気を和ませてくれるが、確かに連発は困りもの。洒落大好きな作家・井上ひさしさんも「それはマナーの問題です」と“警告”している。決して「軽告」ではありませんよ。 (演芸ライター)
     
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