ニューシニアの情報新聞「フロンティアエイジ」
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言葉多きは品少なし
  上田 文世
 
   要らんことばかりをベラベラ喋る若い男。甚兵衛さんの世話で、笊(ざる)売りの仕事にありつく。そこで甚兵衛さん、こう言って戒める。「三言(みこと)喋れば氏素性が現れる。言葉多きは品(しな)少なし。男の喋りはみっともない」。古典落語『米揚げ笊(いかき)』の発端だ。

 6月初め、テレビカメラ40台、記者100人に囲まれて、村上ファンドの村上世彰氏は、まさにベラベラと喋っていた。

 「(ニッポン放送株の買収を)聞いちゃったのかと言われれば、聞いちゃってるんですよね」「皆さんが僕のことをすごく嫌いになったのは、むちゃくちゃ儲けたからですよ。2千億(円)くらい、儲けたんではないでしょうか」

 「沈黙は金」とは思わないが、この様子を「“村上節”全開」と書く新聞もあった。このお喋りが災いを招いたわけではなかろうが、記者会見から約5時間後、彼は逮捕されてしまった。

 ところで、2千億円とはどのくらいの金額なのか。今夏のジャンボ宝くじは2億円が42本、1億円が126本で、最高賞金が3億円。うたい文句は「億万長者は去年の約2倍、168人誕生」だが、2千億円なら、3億円を666人に配ってなお、おつりが出る。3億円長者が、宝くじの4倍近く誕生する勘定だ。

 「村上ファンド報道」が溢れた頃の新聞に、アメリカの著名な投資家が、2つの慈善団体に計4兆3千億円を寄付するという記事が載っていた。4兆円余となると、その価値は想像を絶するが、この投資家の持つ資産総額の85%に当たるという。

 1千万円を銀行に預けても、ゼロ金利時代には、良くてもせいぜい年に数万円程度しか増えない。そんな憤まんいっぱいの中、「聞いちゃった」「むちゃくちゃ儲けた」とベラベラ喋られたら、やはり「嫌い」の方に票を投じたくなるのが人情。アメリカの富豪の記事とつい、比べてみたくなるのも、致し方がないことだろう。  (演芸ライター)
     
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