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世の中、無駄なことが多い
  上田 文世
 
   「今日は銭儲(ぜにもう)けの相談があってやってきた」。上方落語『天狗刺し』は、町内のよろず相談役、甚兵衛はんの所に、こんなことを言って飛び込んできた男との会話で始まる。「この世の中には無駄なことが多いなあ」と前置きして始めたこの男の相談とはこうだ。

 餅屋さんが餅をつこうと杵を振り下ろす。続いて振り上げる。この上げる時にも餅をつかないと「その時の力は無駄や」と言うのだ。そしてこう言う。「そこで上に、もう一つ臼があってね。で、上にも餅があったら、両方で餅がつけまっしゃろ」

 「そらまあそうかも知れんけど、上の臼に入れといた餅は落ちてくるでぇ」と甚兵衛はんに突っ込まれてこの男「さあ、それをあんたに相談に来た」。

 男の発想は理屈からずれているが「無駄や」の言葉は傾聴に値する。今よく目にする電動自転車。坂道では蓄電池からの電流でモーターが動き、ペダルを漕ぐ力を軽減してくれる。下り坂では充電してくれる仕組みになっているので、1回の充電で走る距離が延び、装置の軽量化にもつながっている。そんな自転車が開発され、さらに普及が進んでいる。「無駄」をうまくエネルギーに変えているのだ。

 今年1月に亡くなった即席麺のパイオニア安藤百福さんが、カップヌードル開発を思いついたのは、アメリカでの試食会でバイヤーの一人が麺を小さく切ってコーヒーカップに入れ、湯を注いでいるのを見たことから。常識に捕らわれない発想が、画期的な発明に結びついたのだ。

 ベルトの上に乗ってのランニング。動かぬ機械相手の自転車漕ぎ。トレーニングジムで見るあの光景を「無駄やなあ」と思っていたら、そのエネルギーを利用した遊具を開発する会社も出てきた。

 落語を聴くと、エコライフやビジネスに繋がる発想が、まだまだ広がってきそうだ。今夜もあちこちで落語会がある。皆さん、一度覗いてみませんか。 (演芸ライター)
     
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