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| 1年に4日働いとるだけ |
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上田 文世 |
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企業の好業績を背景に、今年の春闘は労働者側が例年以上に力を入れたが、十分に満足できる成果は得られなかったようだ。賃上げを巡る労使間交渉で、一体どんな会話が交わされたのだろうか。
高度経済成長が始まったばかりの1950年代に、ラジオで「社長哲学」と題する浮世亭光晴・松鶴家夢若の漫才を聞いたことがある。給料を上げてほしいとやってきた従業員に社長がまず「1年を366日として、君の1日の勤務時間は?」と尋ねる。「8時間です」と答えると社長は「ということは、1日の3分の1を働いていることなので、君は年366日の3分の1、122日働いてることになるのう」。
そして社長は「休んだもんは引かんといかんのう」と言って「日曜が52日ある」「土曜は半ドンじゃ」「休憩の1時間を日数に直せば何日かになるのう」「祝祭日と定期休暇もあるはずじゃ」「春と秋の運動会が1日ずつある」などと言って、122日から次々と引いていく。すると残るのはわずか4日に。「君は1年に4日働いとるだけや」と社長。さらに「法事、妻のお産、親戚の不幸、病気で、君は4日休んだ。結局1日も働いとらんじゃないか」と従業員を退散させる。トントンと運ぶ名コンビのセリフ回しで、ついつい社長の計算に納得してしまう漫才だった。
一定収入以上の労働者の残業代はゼロにする法案の国会提出は見送られたが、これを巡って経営者側から「過労死は労働者の自己管理の問題」といった発言もあった。今春闘の攻防では「世界を相手に伍していくには、企業は出費を出来るだけ少なくしていかねばならない」という経営者側の理由を、労働者側が完全に崩すことは出来なかったようだ。
かつてない好収益を上げている企業もある。企業業績の良さは、従業員の労苦もあって生まれたものだ。光晴・夢若漫才の逆バージョンが出来て、従業員側がニンマリするといったシナリオが書けないものだろうか。 (演芸ライター) |
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