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| 初めてでおます |
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上田 文世 |
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NHK朝の連続テレビ小説は、10月放映から「ちりとてちん」に変わった。主人公は大阪で女性落語家をめざすそうで、「ちりとてちん」とは上方落語のタイトル。東京落語では「酢豆腐」という。こんな噺だ。
旦さんの誕生日に招かれた男は出されたお酒、鯛の刺身、それにご飯までを「初めてでおます」と言って大喜び。一方で何でも知ったかぶりをする男が近所にいる。旦さん宅の台所でカビが生え異臭を放つ豆腐が見つかり、これを「長崎名産」と称してその男に出してみると・・・。悪臭をこらえて食べる仕草も見所の一つで、上方落語の人気演目だ。
長い夏がようやく終わって、食欲の秋。ふだんよりさらにおいしい物が周囲に溢れているが、私にとって忘れられないのは、小学校低学年の頃に食べたハムの味だ。ぎしぎしと歯ごたえがあり、スモーキーだった。戦後の食糧難の時代に田舎で育ち、白米だけはふんだんにあったが、肉類には飢えていた。ハムは進駐軍勤務の知人がもたらしたものだった。
「ギョーザ」を食したのは大学1年の頃。夏休みの合宿に先輩が買ってきてくれた。「こんなうまいもん、初めてでおます」と言ったら、仲間からも笑われた。今は50代後半のある噺家さんは、修業中の師匠宅で出たハンバーグが「初めてでおます」だったという。
今年の食欲の秋は、また「値上げの秋」でもある。すでにハムやソーセージ、サラダ油などが値上げになり、小麦価格の急騰で「たこ焼き」の値段にも影響が出ている。車が「初めてでおます」と言って食べ始めたバイオ燃料の需要が拡大し、小麦農家が燃料向けのトウモロコシに作付け転換をしていることが、小麦価格を引き上げた。車と人間が食い合いをしているのである。
さらにめん類やかまぼこ、食パンなどの値上げがあるという。こんなにいろんな物が続々と値上がりしていくのは、「初めてでおます」といったことにならないよう、切に願いたい。 (演芸ライター) |
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