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緑の風に誘われて車を山里へ向けた。福知山からの国道は、昨秋の台風23号による被害の復旧工事が続き、まだ数ヵ所が片側通行。やがて、なだらかな山並みにはさまれた幅200メートルほどの帯状の水田地帯へ出た。
「但東シルク温泉やまびこ」は山ぎわの出石川べりにある。モンゴル遊牧民の家「ゲル」を模した浴場の屋根が田植えを終えたばかりの水田に影を映し、トンビがゆったり空を舞う。
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| 浴場の屋根はモンゴルのゲルを形どる |
「成分の濃い美人の湯」が自慢。浴後はさわやかな清涼感があり、すべすべ感が長く残る。「ここの湯は格別だから」と、わざわざ城崎から来るのだという年配の女性。源泉の説明には「つかるだけで皮膚の脂肪分や老廃物が取れる」とあった。
野菜は地元産、魚は舞鶴から直送。「旬」にこだわって素材を選ぶ食事も魅力だ。中でもソバ粉10割で打つ「赤花そば」は地元限定の品。舌触りが滑らかで口にほのかな香りを残す。同行の妻は「お湯も食事も大満足」を繰り返した。宿泊もできる。
一帯の旧但東町は約300年前から続く「但馬ちりめん」の産地。最盛期の1970年代中ごろには、絹を織る2200台もの織機の音が家々から響いていた。80年代に入って安い外国産に押され、いま織機の数は約十分の一にまで減った。
「満蒙開拓団」として中国北東部へ渡った住民のうち298人が、第2次大戦の終戦直後に集団自決した「辛い過去」を持つ。温泉から約8キロの所に国内唯一という「日本・モンゴル民族博物館」があり、子どもたちの相互招待など、モンゴルとの交流を続けている。
今年4月の合併で豊岡市になった但東町だが、地域の伝統と歴史は温泉の名と外観に残ることになった。(清)
◆メモ 泉質=重曹泉▽効能=慢性の皮膚病や消化器病、やけど、切り傷、痛風など▽入浴料=大人500円、子ども300円、宿泊者150円▽あし=舞鶴・若狭道の福知山ICから約50分。JR豊岡駅からバスで約50分。やまびこTEL0796・54・0141 |