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京丹後市網野町の琴引浜の一角に、小さな小さな露天風呂がある。源泉温度は42〜43度だが、成分などは未公表の不思議な「温泉」だ。ふと思い出し、秋風に誘われて出かけてみた。
温泉を発見したのは地元で織物業を営むと同時に漁師でもあった沢佐一郎さん。沖に湧き上がる泡の原因を調べると、34メートルの海底に熱泉があった。浜との距離は約1キロ。「陸で出てもおかしくない」と考えた沢さんは、同町掛津の浜を掘削して掘り当てた。
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| 湯船は桶からコンクリート製に替わった |
私が訪れたのはお湯が出はじめて間もない20数年前。砂浜に直径2メートルほどの大きな桶が置かれ、お年寄りたちが湯浴みを楽しんでいた。「いずれ大衆浴場でもつくりたい」と沢さんは語っていた。
きっと温泉宿になっているに違いない、と思い込んでいたが、網野町観光協会に問い合わせても要領を得ない。現地を再訪して、確かめたくなった。掛津で最も浜辺に近い宿を聞き、羽衣荘を予約。到着して女将の北垣直子さん(48)に事情を話すと「ここから100メートルほどのところです。今も露天風呂のまま」という。
源泉が国定公園内のため、施設の建設ができなかったらしい。沢さんはすでに故人で、掛津観光協会が管理。「地区のために役立つなら自由にして」という沢さんの意思を尊重し、今も無料で開放しているそうだ。
その夜は、24時間入浴可能な羽衣荘の温泉で手足を伸ばした。新鮮な海の幸を創意工夫した会席料理に舌鼓を打ち、ついつい酒量が過ぎた。
翌朝、露天風呂に向かう。湯船は以前の桶ではなく、一辺3メートルほどの三角形のコンクリート製に替わっていた。お湯はタイムスイッチで汲み上げられているという。あいにくの雨模様で海も荒れていたが、天気に恵まれれば、きっと素敵な湯遊びが楽しめるだろうと思った。 (徹)
◆メモ 正式に「温泉」と認められておらず成分不明。脱衣所もなく無料だが、海岸付近での駐車料金は千円。季節によって湯が張られる時間はまちまちで冬場は休止の場合も。羽衣荘(TEL0772・72・0624)は活けカニ料理が自慢。 |