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湯気の向こうは日本海。ほどよい湯加減に体をゆだね、冬の味覚・マツバガニを味わえば憂さも疲れも霧散する。海鳴りが響くなぎさは、浦島太郎伝説の舞台。丹後半島の浅茂川浦島温泉「シーサイド佐竹」は、日常生活を突き抜けたムードを漂わせる。
JRの大阪発「タンゴエクスプローラー」で、乗り換えなしに網野に着く。宿の裏の八丁浜は、幾筋も白い波頭が寄せて荒れ模様。海岸沿いに並ぶ松は日々の強い風で陸側に10度ほど傾いて育つ。
約20年になる「佐竹」が、浅茂川浦島温泉の冠を付けたのは8年前。地元の旅館が協力し、地下1200メートルまで掘削したところ39度の温泉が噴出した。湯量もたっぷり。一昨年、オーシャンビューの客室の5階建て新館を増築した。
お湯はサラリとして無臭。湯船に沈むとガラス窓越しの日本海が隠れる。温まれば立ち上がり、冷えれば沈んでいると、団体客が来て湯煙でガラスが曇る。タオルでふいたり、お湯をかけたり。隣の露天風呂はガラス窓なしでスダレの覆いがかかる。
若女将の佐竹早苗さんは「海沿いの温泉でトレトレのカニがおいしく、アットホームなもてなしが売り。クチコミで広がって常連が多く、隠れ宿のようなムードも受けているようで」。夕食の卓に並んだカニ料理は、なるほど圧巻だった。
翌朝は冬晴れ。1泊の旅の終わりに、浦島太郎(丹後風土記では水江浦嶋子)を祀る近くの「嶋児神社」へ。大きなウミガメに釣竿と玉手箱を持ってまたがる石像の前でたたずむと急に雪が舞いだした。どうやら積もりそうだ。雪見酒の誘惑を断ち切りがたかった。 (鶴)
◆メモ アルカリ性単純温泉▽神経痛、筋肉痛、打ち身、慢性消化器病、冷え性、疲労回復など▽JR福知山・山陰線「福知山」駅から北近畿タンゴ鉄道宮福線・宮津線で「網野」駅下車。中国自動車道吉川JCから舞鶴若狭自動車道福知山IC、国道9・176・312・482号経由、駐車場完備。所要時間はいずれも3時間半前後▽TEL0772・72・1188 |