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| 直島(香川県) |
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直島は、カーフェリーで高松港から約1時間。夕闇の宮浦港に着いた。前方の総ガラス張りの建物は、昨秋完成した「海の駅」だと、下校中の高校生が教えてくれた。右手に群れ遊ぶ鹿をイメージした立体イルミネーション。その向こうに何か巨大な造形物。「島は変わったようだ」と思った。
民俗学者の故・宮本常一は『離島の旅』(昭和39年、人物往来社)で、直島について「この島もまた周囲の属島も痛々しいまでにはげあがっている。その印象は不気味でさえある」と記している。原因は島の製錬所の煙害だった。そこが今、文化観光の島へ変貌していると聞いて、訪ねてみる気になった。同書には「女文楽の座がすばらしい芸を見せる」ともあった。
翌朝、港近くの宿で目覚めて海辺へ。あの巨大造形物は「赤かぼちゃ」というアート作品だった。直島町は総合出版業のベネッセコーポレーションと共に現代アートの島づくりを実施中なのだ。
約2キロ離れた東海岸の本村に向かう。現代アート風な外観の小学校を過ぎると狭い路地が続く町並みに入る。もともとこの本村を中心に島は拓けた。小さな島だが、江戸初期には領主・高原氏は参勤交代をしていた。漁業、製塩、廻船業でそれほど豊かな島だったという証し。ゆかりの城跡や社寺を巡った。
11時から宮浦の福祉センターで女文楽の公演があると聞いていたので引き返す。愛媛からの団体を前に、名作「傾城阿波の鳴門」が演じられた。人形の表情、手足の動きは、とても素人とは思えない。楽屋を訪ね、座長の隅田美知子さん(77)に話を聞く。すたれていたのを戦後、3人の女性が復活し、現在の仲間は50代から80代までの主婦9人。時折は国立文楽劇場の人形師から指導を受けている。「仲間は増えたり減ったりだが、50代もいてくれるので受け継いでもらえそう」と頼もしい話。公演は毎年30回ほどで、島外にも出かけるとか。
「家プロジェクト」を見るため再び本村へ。古い建物や跡地を利用して現代美術の作家たちが作品を制作、展示する「島ぐるみアート事業」のもう一つの試みだ。光を展示する「南寺」、古代と近代をないまぜにした「護王神社」、光と色の「角屋」などがあった。
現代美術は見る者の感性を問うというが、どうやら自分にはその力量がなさそうだと痛感した。この後に訪れた島の南の地中美術館の見学でも同じ思いだった。でも、それはそれでいいのだろうと開き直ることにした。いずれにせよ直島が、現代アートに満ちた島であることだけは間違いない。
かつて、ここには歌舞伎もあった。文化や芸能を楽しんできた島人のDNAが、今この島の「アートの楽園」づくりを支えているに違いないと思った。夕刻、20分の船旅で、岡山側の宇野港に着いた。 (高橋 徹) |
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