ニューシニアの必読紙「フロンティアエイジ」
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雲と遊ぶ天空の奥大山 2012年2月号
 
 
調理も浴場にも ブナが育む名水  
 
   中国山地の最高峰大山(1729メートル)の山麓は大自然が「水のアート」を織りなす絶好のステージ。烏ケ山(1448メートル)など千メートル超の3山に囲まれた鏡ケ成の平原の休暇村奥大山(鳥取県江府町TEL0859・75・2300)は、中国・米子自動車道江府ICから18キロ、冬季は休暇村の除雪車が開いた高さ2〜4メートルの雪壁の道を7キロも走る標高920メートルの天空の世界である。

 元は軍用馬の牧場だったという105ヘクタールが休暇村のエリア。ガラス張りのロビーからはその広がりと空だけが目に入る。薄いベールを引いたような視界が突然暗転して激しい雨粒。途中から白い氷粒、雪片に変化し、宙に一点の光が差した途端、カーテンを引くように墨は消え去る。ほんの数刻のドラマ。「ここで雲が行き交います。朝だったら芝生広場に小さな雲の赤ちゃんが遊んでいることもありますよ」と石橋正浩支配人がいう。
休暇村奥大山

 日本海側からの水と冷気が大山南麓に5月まで残る豪雪をもたらす。崩落で入山禁止の烏ケ山など、一帯の厳しい環境は久しく人を寄せつけず、広葉樹の原生林や西日本最大級のブナ林を残した。「?=無用の木」の字を充てられたブナは「天然のダム」として雪解け水をたくわえ、地中深くの火成岩層がゆっくりミネラル分を加えて天然水を育んできた。「天の真名井(高天原の神聖な井戸)」など、名水湧出個所は大山周囲で14カ所を数える。

 「江(河川)が集まる府(都)」から名がついた江府町はその水の恩恵に浴し、ブナ林から湧く「奥大山のおいしい水」を第三セクター企業が全国に送り出す。休暇村のふもと標高709メートルにあるサントリーの「天然水奥大山ブナの森工場」は地下からの水を外気に触れさせずにボトル詰めし、水源域の森185ヘクタールの保全涵養にも力を入れる。東京の製氷メーカーや日本コカ・コーラの工場も隣麓にある。

 水質は一般水道水の硬度50〜60に比べ、三セク企業が12、サントリー20。地下250メートルからくみあげる休暇村も15〜20。なめらかでおいしい超軟水だ。休暇村では大浴場から調理場、客室のトイレ用までこの天然水を使う。

 全国の生協やデパートから注文が届く「井上とうふ」2代目の井上博志さん(50)は、日野川沿いの地下150メートルの伏流水をくみ置き、微粒子を沈殿させたうわ水で製造する。材料の大豆も山麓で指定栽培した高たんぱく・糖質の専用品種を使う。井上さんの作った豆腐の昆布じめ、湯葉の刺し身、豆乳・おからを下汁にした大山豚と豆腐の鍋、大豆の味を濃縮したざる豆腐の旨み・・・。休暇村が昨年秋から登場させた「豆腐会席」は「絶品」と評判を呼ぶ。(む)

 ◆ブナの巨木に出あうスノーシュー体験ツアー 積雪が固まる3月でないと近寄れないブナ原生林をスノーシュー(洋式かんじき)とストックで訪れ、山麓最大の巨木(幹回り5.7メートル)に出あう日帰りバスツアーを、(財)休暇村協会休暇村大阪センターが3日と8日の2回、大阪駅前発着で実施する。昼食は評判の「豆腐会席」、約3時間の雪歩き後は天然水風呂に入浴して帰途に。参加費1万2600円。定員各40人で、宿泊希望にも応じる。詳しくはTEL06・6343・2290。
 
 
北九州知るなら角打ち  
明治期から続く異業種交流の場  
 
   九州新幹線の全通で、九州の玄関・北九州市は関西人にもさらに近しい存在になったようだ。その北九州市が発行する情報誌「雲のうえ」の06年10月の創刊号特集は「角打ち(かくうち)」だった。

 百万都市・北九州の人たちがこよなく愛するという「角打ち」って何?。「広辞苑」にも載っていないが、つまりは酒屋の店頭での立ち飲み。実は「雲のうえ」創刊に先立つ05年1月に「北九州角打ち文化研究会」が結成されている。
北九州の角打ち

 立ちあげたのは、門司港の路地裏の老舗・魚住酒店に集う須藤輝勝会長(64)ら10人の呑んべえ。会員はいま約200人に増え、会費なしで参加費は原則「割り勘」だ。年齢も20代から70代まで。会社員、自営業、教員、僧侶、医師など職業も様々。角打ちマップを作り、一昨年はシンポジウムも開いた。

 1901年の八幡製鉄所の開業をきっかけに、北九州には多くの労働者が集まった。3交代制で働く工場労働者が、仕事帰りの朝や昼、そして夜に慰労や気分晴らしで酒を飲むことで根付いた文化という。酒屋は製鉄所などの作業時間に合わせて営業してきた。市内には今、約170軒の角打ちができる酒屋がある。

 「○○酒店で角打ちね!」「新年会は酒屋○○で角打ち」…。北九州では角打ちは集会や相談、商談などの場として日常的な「合言葉」になっている。JTBなどの旅行、旅館業者は「夜は角打ちで北九州文化を味わう」など、酒屋をめぐる角打ちプランを取り入れて人気上々のようだ。

 研究会のメンバーでもある北九州市立大の松永裕己准教授は「疲れた体を癒し、明日への英気を養うために酒は不可欠。とりわけ3交代で働く工員たちが、職場と家庭の間で意識を切り替える空間として、角打ちは機能してきた」と分析。個性ある酒屋での角打ち文化体験をすすめる。

 若戸大橋に近い戸畑区元宮町の藤高酒店に立ち寄ってみた。店主は藤高毅さん(54)。親の代の大正中期から営む老舗酒店。「鉄の町」の雰囲気が漂う古風な店内。量り売りに使われた樽や升、往年の映画ポスター。直角のカウンターを囲んで約40人が立ち飲みでき、常連客でにぎわっていた。

 「酒販店は料飲店行為ができません。座席や腰掛の提供はもちろん、かん付けや肴の提供もいたしません・・・」という福岡県小売酒販組合のお客様へのお願いビラで話が弾んでいたがいつも笑顔の人気女将・須賀子さん(51)は「勤務交代の時間に合わせてお店を続けてきた。乾きものばかりでは若い人たちは栄養がとれないので、料飲業の許可も取って刺し身やフライなども出すようになった」。

 リーガロイヤルホテル小倉の奥内芳和さん(61)とは藤高酒店で出会った。4年前に社長として大阪から転勤してきたが今はシニアアドバイザ―。毎日どこかの酒屋に現れる角打ちファンで研究会の熱心なメンバー。「角打ちはいろんな人が集う異業種交流の場。男女の隔てもなく、皆が対等に楽しく酒を飲めるんです」という。

 研究会がまとめた「角打ちの魅力」は、コップ酒(250円前後)と乾きもののつまみ(50円〜)で、1000円札1枚あれば3店のはしごも可能な安さ、速さ、シンプルさ。その中で出あえる非日常性、多彩な人、よもやま話。そして何より自由な気ままさだ。 (邦)

 ◆メモ 北九州角打ち文化研究会(角文研) のHPは、http://www.kakubunken.jp
 
 
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