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  旅−歴史を歩けば  
 
荒神谷遺跡 2005年11月号
 
 
思いを集め博物館建設 目を奪う銅剣・銅鐸 出土地にも状況再現
 
   秋も深まり初めたころ、宍道湖南西部の「出雲の原郷」をキャッチフレーズとする島根県斐川町を訪れた。20年ほど前に出土した荒神谷遺跡の国宝・青銅器を展示するサイトミュージアム(遺跡博物館)が、開館したと聞いたからである。

 宿泊した国道9号沿いのビジネスホテルを後にし、目指すは荒神谷史跡公園。オロチ伝説で有名な斐伊川の右岸に広がった平野部南端の山すそにある。84年(昭和59年)、その一画でそれまでに全国で出土した総数を上回る358本もの弥生銅剣が見つかり、翌年には一緒に埋納された銅鐸6個と銅矛16本も出土。飛鳥美人壁画の奈良・高松塚古墳と並ぶ大発見として、荒神谷遺跡の名前は一躍有名になった。
荒神谷博物館
町民の寄付で完成した荒神谷博物館

 発見後、何度もこの地を訪れたが、いつも時間に追われた車での取材。今回はどうしても歩いてみたかった。町を横切る国道や主要な道の辻々に「荒神谷遺跡」の道標があって、迷うことはない。

 歩きはじめて40分たらず。谷間にクリーム色の平屋建て(一部2階建て)が見える。出土品を地元で公開したいという願いから生まれた博物館である。南北に長い建物で、正面となる東側はゆるい弧を描く。ガラス戸越しにハス畑や水田、そして青銅器出土地に向かう「古代の小径」が望める。

 総工費は7億円で、同町が単独で建設した。工費の半分は町民の寄付という。郷里を愛する町民の思いが凝縮した建物である。床面積1400平方メートルと小ぶりだが、展示室、収蔵庫のほか、百人ほど収容できる交流学習室もある。運営は地元のNPO法人出雲学研究所(藤岡大拙理事長)が携わるなど、行政と民間の協働の先駆的な試みが始まって
加茂岩倉遺跡
加茂岩倉遺跡の出土状況再現
いた。

 3つの展示室では、21年ぶりに里帰りした国宝の青銅器のほか、映像やレプリカなどで「奇跡の大発見」を紹介する工夫がこらされている。来年1月9日まで開館記念特別展が続き、出土品のうち銅剣42本、銅矛6本、銅鐸6個が前、後期に分けて展示される。

 「古代の小径」をたどって2、3分の出土地には、青銅器類の出土状況がレプリカで再現されている。発見後間もないころに造られ、意欲的な試みとして全国の遺跡の保存展示に与えた影響は大きい。時を経てその地に立ち、改めてそれらがなぜ埋められたのかと、未だに解けない謎に思いは募る。

 史跡公園内には、古代の復元住居や「弥生の砦」と命名された木製遊具、バーベキューサイトもある。遊びながらバイキングの歴史を学べるデンマークの野外歴史博物館を思い出し、ようやく同じような施設が誕生した感慨にふけった。
迎えにきてくれた友人の車で3キロ離れた加茂岩倉遺跡(雲南市加茂町)へ。ここも9年前に39個もの銅鐸が出土し、その様子が再現されていた。荒神谷遺跡の成果が広がっていることが一目瞭然だった。 (高橋 徹 元朝日新聞編集委員)
     
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