ニューシニアの情報新聞「フロンティアエイジ」
フロンティアエイジ=新時代の開拓者
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  旅−歴史を歩けば  
 
韓国西部編(上) 2007年8月号
 
 
公州・扶余 百済の都の誇り伝承
 
    韓国を訪れる日本人は年ごとに増えているが、西部地方に足を向ける人は意外に少ないらしい。古代の百済(くだら)国の故地であるこの地域への理解を深めてもらいたいと、6月末に韓国観光公社が主催した「団塊の世代のための百済文化圏取材旅行」に参加し、忠清南道と全羅北道を3泊4日で巡った。

 ■海の泥で町おこし
 ソウル空港から、まず向かったのは保寧市の大川海水浴場。「マッド・フェスティバル(泥んこ祭り)」の会場として有名で、老若男女が海泥にまみれて楽しむ競走や球技など、さまざまなイベントがあるそうだ。町おこしにと行政主導で始まったイベントで、干潟で貝を採る女性たちの肌がいつまでも老いないのがヒントになったとか。

 「昨年は170万人が参加し、うち外国人が4万4000人。全国1500カ所が応募した祭りコンクールで最優秀に選ばれました。美容と健康によく、開放感が受けています」と李龍雨・保寧市観光課長は胸を張る。

 10回目となる今年は会期2週間の予定で間もなく開催。予告のポスターがあちこちに張られ、浜の近くには年中、泥浴を楽しめる風呂付きの「マッド体験館」もあった。
 
公山城 宋山古墳群
公山城。百済の都だった時代の城跡に復元された 公州観光の中心地、宋山里古墳群(遠景)。右手前は模型館の入り口
 
 
触れて学ぶ工夫に感銘  
 
   ■感銘誘う展示姿勢
 翌日は公州市の武寧王陵へ。大川海水浴場から東北東60キロの内陸部にある宋山里古墳群の一つだ。71年夏、未盗掘のまま発見され、被葬者名が分かる唯一の百済王墓として知られる。

 「『続日本紀」は桓武天皇の生母は、武寧王の血筋を引く人と記す。次代の聖明王は仏像や経典をわが国に送り、以後両国の結びつきが強まる。日本の古代史研究にとっても重要な資料を提供した古墳である。

 宋山里古墳群は公州観光の中心地で、7基の古墳は芝生で覆われ、一帯は公園として整備されていた。古墳群のある丘陵のふもとの模型館に入館して感銘を受けた。日本にも福岡の王塚装飾古墳館、奈良の高松塚壁画館をはじめ類似の施設は多いが、入館者に歴史を分かってもらおうという姿勢にかなり差があると痛感した。展示品はともにレプリカ(復元模型)なのだが、利用の仕方がまるで違う。

 日本では「本物は貴重だから見せない。代わりにレプリカで我慢して。ただし、これも価値があるので触らずに見るだけ」というのが基本姿勢。ところがここでは「歴史を身近に分かりやすく学習する手段」としてレプリカが使われている。

 たとえば玄室にしても、さまざまな角度から忠実に再現したレプリカが造られ、手で触れることも出来るようになっている。「レプリカは学習のための用具」という方針は、その後訪れた公州博物館でも一貫していた。武寧王陵の出土品を中心とした展示館だが、レプリカや推定模型がふんだんに使われていた。
 
 
武寧王陵玄室内部 百済歴史文化館 韓国全図
武寧王陵の発見直後の玄室内部を忠実に再現した復元模型 百済時代の市場のようすも再現されている(いずれ百済歴史文化館)  韓国地図 
 
  ■進む歴史団地事業
 白馬江沿いに新しく開通した「百済大通り」を走り、南西約2キロの扶余に向かう。扶余は公州と並ぶもう一つの百済古京の地で、飛鳥文化のふるさとでもある。

 扶余の古代遺跡といえば定林寺の石塔と、百済滅亡の際に3000人の官女が身を投げた「落花岩」くらいしか思い浮かばなかったが、2010年をめどに百済文化を学ぶための「百済歴史再現団地」という大事業が進められていたことに驚かされた。

 寺院、王宮、庶民住宅などをまとめて復元中なのだ。李廷薫・忠清南道観光振興課長の「訪れれば、子供でもきっと理解してもらえるはず」という話に、百済文化復興にかける、なみなみならぬ意気込みを感じた。

 団地の一部としてすでに完成していた百済歴史文化館に立ち寄ると、遺構、遺物や最新の研究成果が、レプリカと映像で提供されていた。歴史を追体験できる「体験観光」の施設として大きな役割を担っており、チマ・チョゴリ姿の若い女性たちが、かいがいしく入館者たちに接していた。

  奈良の平城宮跡でも大極殿の復元工事が進んでいるが、どのような活用を考えているのだろう。古代と同様に百済文化圏から学ぶべきものは多いようだなどと考えた。

 「体験観光」は、次号で紹介する全州市ではもっと徹底していた。  (高橋 徹 元朝日新聞編集委員)
 
     
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